SECIモデルを両利きの経営に包摂する──第二創業の鍵となる、日本企業の「共同化」の原動力とは?
Vol.3:慶應義塾大学院 特任教授 梅本龍夫氏、アクション・デザイン代表 加藤雅則氏
前回は梅本氏の「物語マトリクス」を用い、「両利きの経営」がいかに実践可能かを検討した。「両利きの経営」ではトップのリーダーシップの重要性が強調されるが、特に日本企業においては、それに応えるミドルや現場の動きが変革の鍵を握るというのが前回の結論だ。そうであれば、トップとミドルの連携力が強化されれば日本企業の再生が進むはずだ。そのための手立てとして、前回の終盤では野中郁次郎教授のSECIモデルの可能性が示唆された。今回はその考えについて梅本氏に解説いただいた。
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- 成功する第二創業は、多様性のある小集団群のチーム戦
- 【Vol.2-1:両利きの経営を「第二創業」に生かす4つのステップ──時間軸の違う組織を統合する、存在目的と物語とは?】を読む
- 【Vol.2-2:「物語マトリクス」と「ケイパビリティ」で理解する、日本企業独自の両利きの経営と第二創業とは?】を読む
- 【Vol.1-1:「両利きの経営」による第二創業が必要な理由──過剰適応によるサクセス・トラップと組織能力とは?】を読む
- 【Vol.1-2:「両利きの経営」は知識創造論ではなく、組織進化論である──組織カルチャーとリーダーの役割とは?】を読む
- 【チャールズ・A・オライリー教授、ウリケ・シェーデ教授、加藤雅則氏の共著書『両利きの組織をつくる――大企業病を打破する「攻めと守りの経営」』】
日本企業ならではの第二創業のヒントがSECIモデルにある
──前回の対談で触れられた「SECIモデルを『両利きの経営』のサブ・モデルとして包摂すると、日本企業のトップとミドルの連携力の再生につながる」という考えについて、詳しく教えてください。
梅本 龍夫氏(慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科特任教授/立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科客員教授/iGRAM代表取締役 物語ナビゲーター、以下敬称略):「両利き」を提唱したオライリー先生たちはトップのリーダーシップこそが重要だとおっしゃいますが、日本の企業ではそれだけだとうまくいかないでしょう。米国ではトップダウンでロジカルにタスク分解して現場が動く仕事の仕方が根付いていますが、日本はそうではありません。トップの示す物語に共感した人たちがフォロワーシップを発揮するときに、事態が動き出すのです。
SECIモデルが提唱された頃の日本では、まさにそういうことが起きていました。だから多くの日本人は、暗黙知が形式知へと変換していくプロセスを身体感覚として知っています。でも、欧米の人にとってはそこが分かりにくいようです。SECIモデルがどうして実現するのか、論理的な説明が不足しているように感じられるという意見をよく聞きます。
だからこそ、SECIモデルには日本的な企業の再生を促す可能性があるんじゃないでしょうか。
加藤 雅則氏(アクション・デザイン代表 エグゼクティブ・コーチ、組織開発コンサルタント、以下敬称略):米国の企業にはできないやり方で第二創業に向かうヒントが、SECIモデルにあるというわけですね。
梅本:欧米でSECIモデルが理解されづらいのは、「共同化」「表出化」「連結化」「内面化」を4つのステージと捉えているからだと思うんです。これを4つの越境プロセスだと理解すると、断然分かりやすくなるはずです。
出典:『知識創造企業』P93を参照し、図版化
加藤:確かに、そう考えると分かりやすいですね。
梅本:そうしたときに、前回お話しした「物語マトリクス理論」の4つのステージの境界1から4に「共同化」「表出化」「連結化」「内面化」を順に位置づけると、バシッと当てはまります。さらにSECIモデルを物語マトリクスに当てはめると、マトリクスの上側が「自治」(コミュニティ、共同体的な活動領域)で、下側が「統治」(ガバナンス、機構としての組織)であると読み解けます。

「物語マトリクス」のスタート地点、起承転結の「起」は左下の「日常/欠落」のステージであり、ガバナンスが効いた公式組織における暗黙知のステージと言えます。前回、日本企業はこのステージから動き出すことができず、失われた30年を通じて進化できなかった、というお話をしました。最近はSECIモデルがうまく機能している事例をあまり聞かないのも、SECIモデルの理論上の問題というより、この左下のステージから左上のステージへと越境する「共同化」が、ガバナンスが効きすぎたことで起きづらくなっている企業環境があるからだと思うんです。
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- 【チャールズ・A・オライリー教授、ウリケ・シェーデ教授、加藤雅則氏の共著書『両利きの組織をつくる――大企業病を打破する「攻めと守りの経営」』】
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