母親になり実感した「家庭の食を守ること」と「キャリア」の両立の難しさ
永井 翔吾氏(以下、永井):今回のインタビューは、私がシェアダインさんの事業の背景に多くの創造性を感じたことがきっかけでご依頼しました。特にこの連載で解説した「統合思考(第1回、第2回)」における「トレードオフを乗り越える思考」の秘訣を探りたいということが強い動機となっています。その核心に迫る意味でも、まずはシェアダイン創業の経緯からお聞きできれば思います。
井出有希氏(以下、井出):シェアダインは前職で同僚だった飯田陽狩と共同で創業したのですが、その当時、母親となり復職するにあたって、共働きだと家庭内の食事が犠牲になると感じていました。長男が偏食だったので、そもそも何を作ればいいか分からないという葛藤もありました。
私自身は専業主婦の家庭に育ったので、様々な自宅の台所での思い出があります。けれども、いざ自分が母親になってみると、家庭の食と向き合えていないなと。
同じく母親である飯田さんと「こんな悩みがあるんだけど」「みんなはどうしているんだろう」と話し合う中で、「昔に戻ることはできないけれど、今の時代に合った形で家庭の食を守っていけるサービスができたら楽しいね」という話になって。そんな中で生まれたのがシェアダインというサービスです。
例えば、うちの子供の偏食に対して、保育園の栄養士さんなど、専門的なスキルを持った人から「こういうアプローチができるんじゃない?」とアドバイスをもらったり、相談しながら作るところまでやってもらったりすることはできないか。悩みや課題に沿う形で、専門性の高い人と出会える仕組みを作れないかというところからスタートしました。
永井:昔は「女性なら仕事を休んで食事を作ればいいじゃないか」という声があったかもしれないですが、今はそういう時代でもない。女性も男性も関係なく、仕事をしながら、でも家庭の食卓を守る方法を考えていくことは非常に大事ですよね。
井出:私たちがサービスを作りたいと思った背景にも「子育ても仕事も両方やっていきたい」という女性が増えていることがあります。それをやっていかないと日本経済も成り立たないから、これからはそれが当たり前の世界になっていく。
家庭を犠牲にして仕事だけをとるのでもなく、キャリアを諦めて家庭のことをやるのでもなく。両方ともを自分らしく選択できるためのサービスの一つとして、シェアダインがあると思っています。