2030年ビジョンと連動する、全員が企業価値向上への貢献を実感できる目標管理
池側:受託開発型の経理であれば、決算を締めて報告する過去の「財務会計」だけで済みますが、攻めの「管理会計」を実行するFP&A組織のミッションは、中期経営計画とどのように連動しているのでしょうか。
三宅:当社では「FP&A」という機能だけを独立した組織として孤立させることはしていません。財務部全体が、現在の中期経営計画で掲げている4つの抜本的変革、すなわち「事業収益モデルの変革」「顧客アプローチの変革」「技術獲得・適用プロセスの変革」「社内業務マネジメントの変革」を推進することそのものをミッションとして定義しています。財務部員がビジネスの最前線を後押しするため、具体的な課題をセットして深く関与しています。
これを全社に浸透させるため、東証の改革要請にも応える形で「ROE(自己資本利益率)ツリー」を導入しました。財務部には約100名の部員がいますが、「今自分が担当している計算や予実分析が、ROEツリーのどの部分につながり、どのように企業価値向上に貢献しているのか」を常に意識させています。
このロジックを会社の人事目標管理とも連動させ、「自分は今期、企業価値向上のためのこの課題に取り組む」という具体的な個人のコミットメントに落とし込んでいます。
FP&A組織が伴走する、事業収益モデルの「TAM型」への移行
池側:日本企業では、管理会計や予算策定の主導権を「経営企画部」が握り、財務部は財務会計や資金管理だけを行うという分業体制をとっている場合もあります。御社における役割分担はどうなっていますか。
三宅:他社の状況を伺うと、管理会計のすべてを「経営企画部」のような組織が担っていて、経理・財務部長のラインの担当ではないという話をよく聞きます。当社では、中長期計画や年度予算の策定などの計数のまとめ上げ、そして事業部への目標値の設定といった管理会計機能は、すべて財務部が担っています。
当社の場合、企画部は主にM&Aの案件探索や交渉を主導する司令塔であり、財務部はそのタスクフォースのメンバーとして深く入り込みます。数字を扱う機能が財務部に一元化されているこの構造は、欧米型のCFO組織に近いと思います。
この一体となった財務体制が今、まさにドライブしているのが、2030年ビジョンに向けた新型ビジネスモデル「TAM(タム)型」への移行です。
従来の工数(人月)ベースのシステム受託開発から脱却し、生成AIなどのイノベーションで圧倒的な生産性を実現する「次世代SIモデル(T型)」、自社の業務知見をベストプラクティスとして複数顧客に展開する「アセット活用型(A型)」、そして素材産業向けなどの共同利用プラットフォームをNSSOLが主体となって提供する「プラットフォーム提供モデル(M型)」へとポートフォリオ刷新に取り組んでいます。
2025年度実績では過去最高益を更新しつつ、このTAM型の売上比率は約35%に達しています。2026年度の見通し(売上収益4,170億円、営業利益475億円)では50%程度、2027年度には75%程度へと急拡大させる計画であり、FP&Aはこの変革を計数面からリードする重要なミッションを背負っています。



