ITスキル標準(ITSS)を応用した「経理・財務スキルスタンダード」の確立
池側:日本企業のFP&A組織立ち上げでは、外部から公認会計士や外資系企業出身のシニア層を中途採用して即戦力化するケースも多いです。しかし、御社は新卒からFP&Aを育成するという、アプローチをとられていますね。
三宅:ええ、他社が中途採用に頼るのであれば、当社はあえて「新卒から生え抜きのFP&Aプロフェッショナルを育てる」という逆張りの戦略をとっています。現在の中途採用比率は約3分の1だったと思います。
NSSOLは社員の9割がITエンジニアの会社ですので、経産省が定めた「ITスキル標準(ITSS)」を独自にカスタマイズし、エンジニアの業務経歴や保有資格、将来のキャリア志向(Will)を一元管理する強固なタレントマネジメントシステムがもともと存在していました。
2026年度から、この仕組みを経理・財務人材にも完全に適用しました。専門性を、(1)日々の決算業務を担う「経理(SSC)」、(2)事業部の意思決定を支える「FP&A」、(3)財務報告や大規模M&Aと資金管理を担う「CoE(財務・経理室)」の3つに再定義しました。
その上で新入社員から5年目までに習得すべき「経理財務スキルスタンダード」を明確に定めました。能力や資格、保存されている「本人が何をやりたいか」のWillが可視化されるため、それらがマッチした場合は、組織として極力その配置転換を実現する「手上げ中心のローテーション(Will・Can重視)」を回しています。

高いヒューマンスキルで「戦う予算」をプロデュースする
池側:AIの台頭により、単純な数字の集計や事務処理の価値が低下する中、これからのFP&A人材に求められる資質、そして今後の展望について最後のメッセージをお願いします。
三宅:ファイナンスの知識がAIによって汎用化していく時代だからこそ、最後に生き残るのは、現場のビジネスを深く理解し、事業本部長の懐に飛び込んでいける高い「コミュニケーション能力」や「ヒューマンスキル」を持った人材です。当社は今後、生成AIの本格活用(AIアクティブユーザー率76%)や、シェアードサービス(SSC)化によってルーティンワークを徹底的に効率化し、人間はより高度な「提言」や「予測(フォーキャスト)」に時間を使えるようにしていきます。
2030年の売上収益5,000億円、営業利益1,000億円という野心的なゴールに向け、足元では中堅企業向けERPを持つインフォコムのPMI(ポスト・マージャー・インテグレーション)を推進し、3ヵ年で1,500億円規模の積極的なM&A・成長投資を敢行しています。
この成長を支えるため、管理会計の仕組みとしても、従来の保守的なボトムアップの積み上げ予算を廃止し、マーケット動向や競合の状況を捉えて行動変容を促す「戦う予算(身の丈を超えた目標設定)」の運用に挑戦し始めています。
さらに、2026年度第1四半期からはサービス・顧客業種別の営業利益開示もスタートさせ、資本市場との対話を一段と強化します。財務数値の達成はもちろん、人的資本の充実をはじめとする非財務価値の向上を企業の持続的成長に結びつけ、ファイナンスの力で経営を力強くドライブする変革のリーダーを、このFP&A組織から続々と輩出していく決意です。
池側:財務部自らがこれほどの熱量を持って変革のリーダーシップを体現されている姿は、次世代のリーダーを目指す若いメンバーにとっても最高の訓練場になりますね。御社のFP&A組織のさらなる進化と、ビジネスモデル変革の成功を確信しております。本日は貴重なお話をありがとうございました。




