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山口周が語る、AI時代のリーダーと事業開発の条件──アジェンダ設定力とスマイルカーブの両端へのシフト

ゲスト:独立研究者、著作家、パブリックスピーカー 山口周氏

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コンテキストを読み、事業に活かす「問題と解決の4象限マトリックス」

栗原:Biz/Zineの読者には、大企業で新規事業創出や経営企画に携わるミドルマネージャーが多くいます。この「コンテキスト」という補助線を使って、新規事業の筋の良し悪しを見極めるための具体的な思考フレームワークはありますか。

山口:私が普段のワークショップや思考整理で使っている「問題」と「解決法(技術)」の4象限マトリックスをホワイトボードに書いてみましょう。

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 新規事業やイノベーションを企画する際、まず自分たちが取り組もうとしているテーマがこの4象限のどこに位置するのかを自覚する必要があります。

 「問題も古く、解決法も古い」左下の領域は、単なる既存市場のレッドオーシャンですから、新規事業としての目はほぼありません。大企業が陥りがちなのが右下の「問題は古く、解決法(技術)が新しい」領域です。抗生物質や医療の内視鏡、あるいは新幹線が典型ですが、「病気を治したい」「速く移動したい」という昔からある普遍的なニーズに対し、新しい技術的なブレイクスルーや他分野からの技術移転で解を出す。ここは一見、筋が良く見えますが、「何百年も誰も解けなかった古い問題を、なぜ今あなたが新しい技術で解けると思うのか」という非常に高い技術の壁や、組織的な開発体力が求められます。

栗原:では、コンテキスト(文脈)という観点から、現代において最も価値を生み出しやすいのはどの領域になりますか。

山口:左上の「問題が新しく、解決法(技術)は古い(あるいは枯れている)」領域、そして右上の「問題も新しく、解決法も新しい」という、上の「新しい問題の生成」に関わる領域です。

 たとえばウォークマンは、使われている音響技術自体は当時すでに枯れたものでした。しかし「移動しながら外で音楽を聴く」という、それまで存在しなかった新しいライフスタイルの文脈(問題)をある意味では「人工的」に生成したことで大ヒットした。AirbnbやUberも、使っているIT技術自体は高度に新規なものではありませんが、「部屋や車をシェアする」という新しい価値観の文脈をデザインしたからこそ、巨大な市場になった。

 社会の倫理規定や人々の価値観という「社会的コンテキスト」は不可逆かつ急速に動いています。20年前なら誰も気に留めなかった環境負荷やジェンダー多様性が、今やシリアスな「問題」として立ち現れているように、時代の地殻変動を敏感に感知し、社会に「新しいアジェンダ(問い)」を提示できる領域こそが、現代のイノベーションの主戦場なのです。

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「中期経営計画」を綺麗に作っている会社ほど、変化に取り残される

栗原:新しいアジェンダを捉えることが重要である一方で、日本の多くの大企業では、3年や5年固定の「中期経営計画(中計)」に縛られ、計画通りに数値を達成することが至上命題になっています。

山口:極論を言えば、中期経営計画を硬直的に運用している時点で、コンテキスト・リーダーシップを発揮することは絶対に不可能です。なぜなら、中計というのは典型的な「クロノス(計量可能な直線的時間)」の発想で設計されているからです。

 5年後に起きると予測して計画した技術のブレイクスルーや他社の参入が、来月起きてしまうかもしれない不確実な世界を私たちは生きています。AppleのiPhoneが成功したのは、中計に沿って段階的に開発したからではありません。ジョブズが「スタイラスを使わず、指2本で操作する」という理想を掲げつつ、その核となるタッチパネルの特許を持つ会社がある日見つかったときに、間髪入れずに買収して一気にアクセルを踏み込んだからです。

 3年前に決めた計画をどれだけ正確に守れたかを競うような「計画至上主義」の組織では、目の前でカイロス(好機)の波が立ち上がっても、パドルを始めることすら許されません。中計そのものを一度やめるか、あるいは「長期的な大まかなディレクション(構想のスケッチ)」だけをガードレールとして定めておき、中の施策は臨機応変に変更できるアジャイルな組織構造に作り替えない限り、マクロな環境変化に寄り切られて終わるでしょう。

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人間の仕事は「両端」のスマイルカーブに移る

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この記事の著者

栗原 茂(Biz/Zine編集部)(クリハラ シゲル)

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