圧倒的な生産性を生み出すイノベーションの源泉は「愛情」である
AIによる業務代替は、人間の労働投入を高付加価値業務へ再配置し、圧倒的な生産性の上昇をもたらす。
「生産に次ぐ生産」を「無尽蔵」に実現できると、物価上昇率よりも賃金上昇率が高くなり、各個人の購買力が上がっていく。AI時代の行き着く先は、たとえば、時給が100万円になってしまう。そうすると、1ヵ月に1時間ぐらいは自分の「身代わりAI」が適切に働いてくれているかをチェックする「単純労働」を強いられるのだが、残りの時間はあなたの好きなことをして過ごす未来が到来する。
この生産性の上昇は、IT革命・AI革命を推進してきた人々の圧倒的な「愛情」を原動力にする。歴史を振り返れば、白物家電(洗濯機・冷蔵庫など)を開発し、「世の女性たちを家庭内労働から解放したい」と情熱を燃やし続けた、昭和の家電メーカーの泥臭いオジサンたちの「愛情」とまったく同じ「愛情」だ。
「水道哲学」をご存知の読者も多いだろう。1932年(昭和7年)5月5日、パナソニック創業者・松下幸之助は「物資を『生産に次ぐ生産』によって『水のように無尽蔵』にすることで誰にでも入手できる価格で提供して、貧乏の克服を実現しよう」と訴え、物心ともに満ち満ちた「理想の社会」の建設(楽土)を目指した[2]。
そこには、明確な意志、「愛情」がある。1929年(昭和4年)、世界恐慌が日本を飲み込んだとき、松下幸之助氏はこう語ったそうだ。
「松下がきょう終わるんであれば、きみらの言うてくれるとおり従業員を解雇してもええ。けど、わしは将来、松下電器をさらに大きくしようと思うとる。だから、一人といえども解雇したらあかん」
(出所:松下幸之助.com「一人も解雇したらあかん――情を添える〈2〉」(PHP研究所))
極貧を経験し、10代から20代半ばまでに家族7人を結核などの病気で失い、天涯孤独の身となった松下幸之助氏にとって、信じてついてきてくれる従業員は「新しい家族」だった。社員を道具とみなさず「人間尊重の経営」を実践する。それは、彼の愛情深さのビジネス的な表現であり、技術革新の原動力そのものなのだ。
[2] パナソニック ホールディングス「「パナソニックの原点、「水道哲学」の真意・・・それは一人ひとりの幸せが持続する社会の実現」
