新規事業を始める前に成功を証明する──0→1フェーズにおける検証の型化
株式会社CINCAは、新規事業の立ち上げに特化した「スタートアップスタジオ」を展開している。同社は一つの事業を大きく育てるのではなく、連続して新規事業を作って「0から1」を繰り返し、最終的に売却してキャピタルゲインを狙う業態だ。現在は主に日本を代表する大企業の新規事業室と協働し、立ち上げをサポートしている。
代表取締役社長の阿部拓貴氏は、「新規事業の0から1のフェーズに限って言えば、業種を問わず再現性が取れるやり方があるのではないか」と語り、これが同社のコア仮説だと明かす。具体的には、物を作る前に「売れることの証明」を検証することを重視。インタビュー対象者の集め方や、次のフェーズに進む基準を定量化し、高速に回せるオペレーション(型)を組んでいる。社内では常に20から30件の新規事業が動いているが、すべて0から1のフェーズであり、得られた知見で常にこの「型」をアップデートしている。
メガベンチャーでUI/UXデザイン業務に従事した後、株式会社GameWithの創業に参画。執行役員、子会社社長に就任し、2017年にマザーズ、2019年に東証一部に上場。2021年に株式会社CINCAを設立し、新規事業の0から1を代行する「レンタル新規事業室」を提供。
近年は検証プロセスもAIで劇的に効率化されている。インタビューをAIアバターで自動化したり、議事録からガントチャートを自動更新したりする仕組みを構築。阿部氏は「これらの仕組みは最終的にクライアントにすべてお渡ししています」と語る。さらに、特定のベンダーに依存する「ベンダーロックイン」を防ぐため、あえて「Claude Code」や「Codex」ベースでオペレーションを構築し、データ移行や内製化に配慮している。
「社内の制約」から脱却するカーブアウトという選択肢
新規事業プログラム等を通じて、0から1のフェーズで数百万円規模の売り上げが立ったタイミングで直面するのが「出口戦略(Exit戦略)」の課題だ。阿部氏は、次のフェーズに進む際の選択肢として「事業部移管」「新部署設立」「子会社設立」「カーブアウト」の4つを挙げる。
これらは、右に行くほど独立性が高まる一方、親会社のアセット(ブランド、販路、予算、人材など)を使えなくなるトレードオフがある。「事業部移管」はアセットをフル活用できるが、売り上げ規模が小さいため移管先に嫌がられる懸念がある。「子会社設立」は独立性により展開は早いが、資本関係があるため品質保証要件など親会社の基本ルールに合わせる必要がある。
そこで注目されるのが、最も独立性が高い「カーブアウト」だ。最大のメリットは、親会社の出資をマイノリティ(少数株主)投資に抑えることで、社内制約を引き継がずにスタートアップ特有のスピード感で事業展開できる点にある。
阿部氏は「起業家主導型カーブアウトは経済産業省も公式にガイドラインを出して推奨しているスキームです」と解説する。自社内では厳格な品質管理や人事制度に阻まれ、適切なインセンティブ設計や迅速な軌道修正が難しい。経産省のガイダンスでは、起業家人材が出向や退職の形で新会社を設立し、親会社がマイノリティ出資を行い、不足分は外部のベンチャーキャピタル(VC)等から集める。これにより親会社は株主として関与を残しつつ、事業の成長スピードを極限まで高められる。

