分散した計数管理組織を統合、ボトムアップとトップダウンで挑んだFP&A組織本格化
池側:質の高いデータ基盤を作っても、それを活用する組織体制が分断されていては効果が出ません。富士通では2023年にFP&A組織を本格発足させましたが、既存組織からの抵抗やハードルは高かったのではないでしょうか。
益田:非常に高いハードルでした。当時の富士通には、事業部側の「事業管理部」や財務経理部員が属する「ビジネスマネジメント本部」など、多様な場所に計500名以上の計数管理人員が分散していました。結果として間接コストが膨らみ、事業側と経理側で計画と実績の数値認識がズレる「他人事」の文化が生まれていたのです。
これらを根底から変えるため、分散していた計数管理組織をファイナンス組織配下へ一括集約する改革を行いました。最初はミドル層を中心に「決算で忙しい」「事業のことは現場がやることだ」といった強い反発がありました。
池側:そのような組織の壁をどのように乗り越えられたのですか。
益田:「ボトムアップ」と「トップダウン」の両面から攻めました。
ボトムアップとしては、変革に賛同してくれる一部の事業部門と小さな成功事例を作り、「数値に基づいた支援で業績が伸びる」実績を可視化しました。同時にトップダウンとして、経営層との1on1を重ねてFP&Aの必要性を直接訴え続けました。最終的に経営会議の場でトップから強烈なコミットメントを得られたことで、FP&Aの実践に向けた組織統合を一気に進めることができたのです。レポートラインは財務経理本部に置きつつも、「9割方は事業トップ(ビジネスグループ長)の方向を向いて伴走しなさい」と依頼しています。
業種軸への転換とグローバル・レポートラインの統一
加勢川薫氏(以下、加勢川):私は元々、事業側のFP&Aとしてエンタープライズ事業の損益管理を担当し、現在は本社でグループ全体の数字を束ねるGroup FP&Aに携わっています。組織改革以前は、事業部と経理部で異なるフォーマットのデータを使って同じ作業を繰り返すといった歪みがありました。組織が一本化されたことで、経営戦略と現場の動きが直結する手応えを感じています。
2009年入社。IFRS導入や連結決算・開示といった財務会計領域を歩んだ後、2020年より管理会計領域へ転身。エンタープライズ事業のFP&Aとして現場の業績管理や経営サポートを担当。2025年より現職にて、全社視点での予算策定や経営意思決定を支えるGroup FP&A機能を担う。
池側:グローバル展開を進める上でのファイナンス体制の整備についてはいかがでしょうか。
益田:富士通は今後、日本で作ったソリューションを世界へ展開するため、従来の「地域軸マネジメント」から「グローバル業種軸(製造、金融、公共など)マネジメント」へと舵を切ります。これに先立ち、私たちは2024年から海外拠点(欧州、米州、アジア太平洋)のCFOを含むファイナンスのレポートラインを財務経理本部長である私へ一本化しました。
池側:グローバルでファイナンスのレポートラインを一本化できている日本企業はまだまだ珍しいですね。
益田:業績評価やバランススコアカードの評価権限を本部に集約したことで、世界中のファイナンスチームが同じ物差しで事業をサポートできる基盤が整いました。単なる管理目的ではなく、「グローバルで迅速に意思決定を行うため」に必要な体制だったと感じています。



