ファイナンス業務の90%をAIへ。それでも人員削減しない仕組み
池側:富士通では、グループの会計オペレーションを担う富士通アドバンス・アカウンティングサービス(FAA)において、極めて高度なAI活用を進められているとお聞きしました。
鈴木菜々子氏(以下、鈴木):私は現在、FAAにてオペレーションのAIプロセス変革を推進しています。
2012年入社。プロダクトやSI事業の管理会計、本社Group FP&Aにて連結キャッシュ・フロー管理や外部公表業務に従事。現在は富士通アドバンス・アカウンティングサービスにて、オペレーションプロセスをAI前提で再設計する「OIC構想」の実現に向け、AIプロセス改革プロジェクトを推進している。
これまでFAAは一般的なシェアードサービスセンター(SSC)として定常業務をこなす役割が中心でした。しかし、益田がFAAの社長に就任したことを機に、AIやデータ利活用を駆使して高度な業務支援を行う「OIC(Operations Intelligence Center)」へと進化させる方針が打ち出されました。
池側:具体的にはどの程度のAI活用を目指しているのでしょうか。
鈴木:「対面での会計監査対応や捺印など、人にしか行えない業務を除き、業務の90%をAIエージェントで自動化する」という目標を掲げ、2027年3月までの達成に向けて取り組んでいます。富士通独自の国産AI(大規模言語モデル:LLM)である「Takane(高嶺:タカネ)」を基盤とし、複数のAIエージェントが自律的にデータの抽出・照合・分析・報告書作成までを完遂する仕組みを構築中です。
池側:「業務の90%をAI化する」と聞いた現場の反応はいかがでしたか。「自分たちの仕事が無くなるのではないか」といった不安の声は社内でなかったのでしょうか。
鈴木:当初は正直なところ困惑の声もありました。トップの益田から「これは人員削減のためのコストカットではなく、手作業から解放された人間が、より高度な分析や事業支援といったやりたい仕事へシフトするための改革だ」というメッセージが明確に伝えられました。ゆくゆくは、ここで培ったAI適用のノウハウ自体を社外のお客様へ提案・外販していく「カスタマーゼロ(自社を最初の導入事例とする)」の精神で取り組んでいます。
精度98.3%のAI売上・損益予測の実現で効果的だった仕組み
池側:未来予測型経営の要となる「業績予測」の領域では、AIをどのように活用されているのでしょうか。
田中:従来の業績予測は、各事業部門からの手動の積み上げに頼っていました。しかし、組織によって予測の度合(強気/弱気)にバラつきがあったため、3ヵ月後の着地予測で大きな乖離が生じる課題がありました。そこで社長からの「現場から予測を集めるな、データから客観的に算出せよ」という指示のもと、機械学習を用いた独自のAI予測モデルを開発しました。
池側:AI予測モデルの仕組みと、現在の精度について教えてください。
田中:Salesforceに蓄積された商談明細(パイプラインデータ)を軸に、過去の勝敗パターンを学習して受注・売上・営業費用までの機械学習ベースの予測を自動算出しています。直近の検証では、3ヵ月先における受注の予実誤差率はわずか1.7%(予測精度98.3%)という非常に高い精度を達成しました。



