コーポレートセクレタリーへの脱皮──能動的な議題設計へ
栗原:第3の柱である「取締役会の機能強化」において、特に重要となる「取締役会事務局」の役割について教えてください。
小山:従来型の事務局は決定されたアジェンダに従い資料を収集し、会議運営を担う役割が中心でした。しかし今回の改訂では、取締役会事務局について、単なる事務方にとどまらず、適切な審議事項を定めるなど能動的に運営することが望ましいと明記されました。私はこれを、従来型の事務局から「コーポレートセクレタリー機能」へ進化する契機だと捉えています。
栗原:欧米におけるコーポレートセクレタリーと比べると、どのような機能が求められているのでしょうか。
小山:欧米ではコーポレートセクレタリーが専門的なガバナンス機能として取締役会と経営陣の双方を支援し、アジェンダや情報設計に深く関与する例が多く見られます。執行側だけがアジェンダを独占すると報告や安全な案件ばかりが並び、不都合なリスクや事業撤退といった監督すべき本質的な論点が会話の外に追いやられてしまいます。
(再掲)資料提供:株式会社カタリス/クリックすると拡大します栗原:事務局が能動的に機能するための具体的なステップはどのように設計すべきですか。
小山:まず1つ目のステップとして年間の審議計画をあらかじめ設定し、どの時期にポートフォリオを検証するかという枠組みを取締役会で先に決定します。2つ目のステップとして、現場の生情報の事前提供や視察・対話の機会を設定し、社外取締役への情報提供を会議の外で設計します。最後に3つ目のステップとして、議長や社外取締役に直接アクセスできる経路を確保し、執行部門だけを介さずに論点や情報を届けられる情報経路と、適切な組織的距離を確保します。
「社外取締役の質」をどう担保するか
栗原:今回の改訂では独立社外取締役について「他社での経営経験者を含めること(原則4-13)」が明記されました。選任プロセスや質の担保についてどうご覧になっていますか。
小山:企業側調査では62%の企業が、社長・CEOから紹介された社外取締役を登用しています。一方、社外取締役本人を対象とした別調査では、65%が「当時の社長・CEOが指名を主導した」と回答しています。両調査は対象・設問・時点が異なるため単純比較はできませんが、CEOが候補探索・指名に大きく関与していることは双方からうかがえます。形式が整ってきた今、真に問われるのは、候補探索・評価・指名の各段階に独立した視点をどう組み込むか、そして社外取締役が経営の現場で起きている異常を捉え、必要な問いを投げかけられるかという質の部分です。
栗原:有事におけるガバナンスの機能不全を防ぐためにも、社外取締役の役割の再定義が必要ですね。
小山:過去の不祥事でも、必要な情報が届いていなかったり現場のリスクを数値だけで判断できなかったりしたことが要因に挙がります。平時は発言がなく見えても、有事の際に適切なリスク察知や牽制ができるかが勝負です。選任段階からどのような役割と知見を発揮するのかを具体的に言語化し、選任プロセスの透明性を高めることが求められます。



