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2026年改訂CGコードの傾向と対策──形式的な制度対応を脱却し、ボード変革と事業成長へ繋げるには?

ゲスト:株式会社カタリス エグゼクティブディレクター 経営企画部長 小山陽平氏

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最優先課題は「有価証券報告書の株主総会前開示」──その誤解の解消と2つの選択肢

栗原:実務的なインパクトについて深掘りさせてください。第1の柱である「有価証券報告書の株主総会前開示」について、現場では懸念の声も上がっています。

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資料提供:株式会社カタリス/クリックすると拡大します

小山:第一に解くべき誤解は、「コード改訂により無条件で決算早期化を強制される」という思い込みです。コードが求めているのは「総会日前の提出」であり、解釈指針が示す「3週間以上前」という数値は一律の義務ではなく、解釈指針が「最も望ましい」と示している水準です。

 2026年3月期のデータを見ると、プライム市場の94.3%企業がすでに総会前に有報を提出していますが、その大半は総会の1〜3日前です。3週間以上前に提出できている企業はわずか7社にとどまります。このギャップを埋めるアプローチには大きく分けて2つのルートがあります。

栗原:その「2つのルート」の具体像と、それぞれのメリット・デメリットを整理していただけますか。

小山:有価証券報告書の提出を早める「ルートA」と、議決権行使基準日や株主総会日程を再設計する「ルートB」があります。

 「ルートA」は、有価証券報告書の提出を早める方法です。HOYAは2026年6月5日に有価証券報告書を提出し、6月29日に株主総会を開催することで、総会24日前の開示を実現しました。早期提出を進める実務では、決算・監査・開示工程の調整や子会社との報告様式の標準化などが論点になります。生成AIによるドラフト作成も効率化の一手ですが、法定開示書類である以上、最終的な確認・検証は必要です。

 「ルートB」は、議決権行使基準日や株主総会の日程を再設計する方法です。アドバンテストは議決権行使基準日を3月31日から5月15日に変更し、2026年7月31日に株主総会を開催しました。その結果、6月26日の有価証券報告書兼事業報告書の開示から総会まで35日間の検討期間を確保しています。一方、定款変更、配当基準日との分離、株主名簿の確定、役員の信任更新時期など、制度面・運営面の論点を横断的に検討する必要があります。

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 特にルートBでは、総会を後ろ倒ししただけで直ちに取締役の席が空くわけではありませんが、新体制への移行時期がずれることになります。また定款に定めた基準日を変更する場合は定款変更が必要です。経営企画の役割は一方に決め打つことではなく、自社の状況を踏まえて両ルートのコストとリスクを定量的に比較し、経営陣に提示することです。監査法人との調整や株主総会日程・基準日の設計など、自社だけでは完結しない論点だからこそ、今年度中に着手すべき最優先課題だと言えます。

キャピタルアロケーションと「撤退」の難しさ

栗原:第2の柱である「経営資源の配分」と「不断の検証」についてはいかがでしょうか。小山さんは独自に日本企業の事業撤退に関する調査を行われたそうですね。

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(再掲)資料提供:株式会社カタリス/クリックすると拡大します

小山:2026年7月末時点の東証プライム内国会社1,551社を起点に、2023年4月から2026年7月までの適時開示を調査したところ、現時点で352社、全体の22.7%で事業撤退にあたる開示を確認しています。つまり、「日本企業は事業から撤退しない」というイメージとは異なり、3年余りの間にプライム上場企業の4社に1社近くが何らかの事業撤退を公表していたことになります。

 一方で、より重要なのは「撤退したかどうか」だけではなく、「なぜ撤退したのかを、外部から検証できる形で説明しているか」です。現在、撤退理由について対象を拡張した再検証を進めていますが、これまでの分析では、資本収益性やあらかじめ設定した定量基準への抵触を明示して撤退判断を説明する例は極めて限られています。日本企業の課題は、単純に「撤退できない」ことではなく、撤退判断の基準や根拠が外部から見えにくいことにあるのではないかと考えています。

栗原:開示上、定量基準との対応がほとんど示されないのはなぜだとお考えですか。また、実際の撤退意思決定では、どのような点が障害になるのでしょうか。

小山:私がこの調査と実務経験から感じるのは、日本企業の課題は撤退基準の有無以上に、それを実際に発動させる推進主体が曖昧なことです。

 私自身、日本ヒルティ時代には、全社方針との整合を見直す必要がある代理店経由の販売モデルの見直しに取り組んだことがあります。また、工機ホールディングスでは、事業の撤退を決定した後も7年間にわたる部品供給や顧客対応が必要となり、撤退後まで含めて設計する難しさを経験しました。

 新規事業には推進者が置かれますが、撤退では誰が議論を前に進めるのかが曖昧になりやすい。だからこそ属人的な判断に依存せず、取締役会が事業ポートフォリオを不断に検証する場を仕組みとして組み込むことが不可欠です。私は、原則4-1が求める「具体的に何を実行するのか」という説明を実質化するには、撤退判断だけでなく、人員再配置や顧客対応の継続設計まで含めて考える必要があると思っています。

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コーポレートセクレタリーへの脱皮──能動的な議題設計へ

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この記事の著者

栗原 茂(Biz/Zine編集部)(クリハラ シゲル)

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