説得力のある「エクスプレイン」の書き方と2027年7月に向けたロードマップ
栗原:2027年7月末の「コーポレートガバナンス報告書」の提出に向け、企業はコンプライ・オア・エクスプレインとどう向き合うべきでしょうか。
小山:形式的にコンプライ率100%を目的化することは、今回の改訂の趣旨に沿いません。自社に合わない原則があれば堂々と不実施を選択すべきです。説得力のあるエクスプレインを作る上で、私は(1)実施しない合理的な理由、(2)原則の目的を満たす代替手段、(3)移行に向けた工程と期限、の3つが特に重要だと考えています。エクスプレインの作成は自社の経営思想を説明するための最高の言語化トレーニングになります。
栗原:提出期限までのロードマップと優先順位の付け方についてアドバイスをお願いします。
小山:3段階で整理することを推奨します。最優先で今すぐ着手すべきは有報の総会前開示であり、監査法人との調整や株主総会日程・基準日の設計など、自社だけでは完結しないため、今年度中にルートAとBの方針を決定します。次に優先すべき早期着手・段階的高度化は取締役会事務局の機能強化であり、実態が伴うまでに時間を要するため早く試行運用を始めます。第三段階として慎重に扱う内容はキャピタルアロケーションや事業ポートフォリオであり、形式主義に逆戻りしないよう、まず取締役会での検証プロセスを定着させてから開示を作成します。
経営企画にとっての第一歩は「意思決定の記録」の読み直し
栗原:最後に、明日から実務に取り組む経営企画部門の皆様へ具体的なアクションのアドバイスをお願いします。
小山:明日からできる第一歩は、改訂後コードの基本原則4つと原則26の計30項目を手に、自社の過去1年間の意思決定の記録を徹底的に読み直すことです。実際の取締役会資料、議事録、投資審査資料を突き合わせ、成長投資や事業撤退の検証が本当に議題に上っていたかを確認します。記録を見て何も議論されていない領域があれば、そこが自社における真のガバナンスのギャップです。
栗原:社内の各部門やキーマンを巻き込んでいくためのコミュニケーションのコツはありますか。
小山:論点ごとに巻き込むべき社内キーマンを明確にし、対話のスタート地点を間違えないことです。
経理・財務・法務部門に対しては「有報の早期開示は決算早期化と同義ではない」という正確な認識を共有し、ルートAとBのトレードオフを比較検討します。CFOやCSOに対しては基準作りよりも「年間カレンダーの中に事業ポートフォリオの検証枠を何回組み込むか」を握ることを優先します。総務部や取締役会事務局に対しては、経営企画から「事務局の役割を広げ、年間審議計画を一緒に作りましょう」と助け舟を出し、パートナーになっていきます。
経営企画の本当の役割は開示文書を綺麗に清書することではなく、説明するに足る実質的な経営意思決定の仕組みを社内に作り上げることです。今回の改訂を自社の経営プロセスを根本から高度化させる絶好の機会として活用していただきたいと思います。
栗原:本日は非常に示唆に富むお話をありがとうございました。




