サイエンティフィック、アカウンタビリティ主義への疑問
宇田川:
今、アカデミー・オブ・マネジメント(Academy of Management)という経営学の中でも一番大きな学会の会員数が減っています。このトレンドが続くのかどうか、ウォッチし続けたいと思っています。経営学は、特に1990年代後半からサイエンティフィックで頑強な実証を組み上げていくのがスタンダードになってきました。山口さんの本で書かれていた“アカウンタビリティ”の高いロジックですね。そういうものは結果が明確に出るので、人文学的な研究に比べて強さがあったのですが、厳密さでは経済学に負けてしまいます。それなら経営学で研究発表する必要がないのでは、ということで、若い院生や研究者が今までメジャーだった学会から出ていっているのかもしれません。実証研究もとても大切な領域なので、もしそうだとするととても残念だなと思うのです。大事なのは方法ではなく何を明らかにしたか、なのですから。
それと、私はクリティカル・マネジメント・スタディーズ(批判的経営学研究)というマイナーなディビジョンにも所属して研究をしています。その分野では数年前、「いい論文を書いてトップクラスの学会誌に載った、けれど誰もそんな論文読まない。何の価値も生まない。それって経営学なのか?」ということを議論しているセッションもありました。