PR

消費の主体者を生物進化の視点から捉える「サピエンス消費」、4つの「進化本能モジュール」とは何か?

BizZineセミナーVol.1レポート後編:株式会社クロス・マーケティング水師裕氏&株式会社リサーチ・アンド・ディベロプメント 橋本紀子氏

 物が売れない時代と言われ、一方で刹那的な消費行動も目立つ昨今、「今」だけに囚われず、約20万年に及ぶホモ・サピエンスの歴史を紐解き、「進化本能」に基づく人間理解をもとに消費を読み解こうという機運が高まっているという。進化における自らの遺伝子の生存に有利になるような「心の動き=本能」を鍵とする「サピエンス消費」とは何か、どのようにビジネスに活かせるのか。株式会社クロス・マーケティング クロスラボ 主席研究員の水師 裕氏、株式会社リサーチ・アンド・ディベロプメント 取締役の橋本紀子氏による講演をお届けする。

[公開日]

[講演者] 水師 裕 橋本 紀子 [取材・構成] 伊藤 真美 [写] 和久田 知博 [編] 栗原 茂(Biz/Zine編集部)

[タグ] 事業開発 リサーチ ジョブ理論 サピエンス消費 進化本能モジュール

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

「進化本能」という視点から消費の本質を掴む

 近年、書籍やテレビなどで「進化論」をベースに人間を語るコンテンツが増えていることにお気づきだろうか。「人間理解を進化視点で見る」という静かなブームの理由として、株式会社クロス・マーケティング クロスラボ 主席研究員の水師 裕氏は「どこか“拠り所のない時代”にあって、『我々はどこからきてどこに帰るのか』といった昔からの問い、自らのルーツに対する関心が高まってきているのではないか」と分析する。

 現在、低欲望社会と言われるほど市場は停滞し、その一方で欲望が刺激反応化して刹那的な購買が引き起こされているが、理由は不明だ。他にも格差社会や孤独死、トランプ政治に見られる排外主義や自国ファースト、化石資源の枯渇や核の脅威、AIなど、大きな不安に覆われる中で、確実に頼れるものを求める気持ちが高まっているのだろう。

 すでに欧米ではアカデミックな研究分野でも、消費者行動を「進化視点」から分析しようという動きがあるが、日本ではやや出遅れ感が否めない。そこで民間企業である株式会社クロス・マーケティングが、そのメカニズムや実務応用に向けた研究を進めている。その研究セクションであるクロスラボの水師氏は、既存のマーケティングの枠組みに対する課題意識をこのように語る。

これまで消費の主体を『ショッパー(買う人)』、『消費者(消費する人)』、『生活者(生活する人)』などと定義づけて分析してきたが、これらは右肩上がりを前提とした大量消費社会が前提となっている。混迷を極める低成長時代へとシフトした今では、マーケティングを考える上での制約条件になっているのではないか。新しい探求の対象として進化の視点から人間を捉え直し、『消費のなぜ』を考えてみることが必要ではないか。

サピエンス消費

 人類がチンパンジーとの共通祖先と枝分かれしたのが700万年前、そのほとんどを定住することなく過ごしてきた。定住して農耕を始めたのが1万年前、まして現在の消費活動はたかだか100年前からであり、そのわずかな期間での常識を当然として考えるのも無理がある。

 数百万年におよぶ狩猟採集生活の環境に適応し、人間の心は進化した。進化というと「進歩」であるかのような誤解があるが、それは違う。進化とは、結果論であって、集団におけるある遺伝子の出現頻度が時間とともに「変化」するという概念である。遺伝子は心の構造や行動に影響を与えるので、現代に生きる人間の心は、狩猟採集生活の環境に適応して形成されたものと考えることができる。進化は進歩ではないので、現代社会のように外部環境が急激に変動すると、狩猟採集生活に適応した人間の心が時々ネガティブに誤作動を起こすことがあるのだ。

進化的な見方から、今の社会で心がどのように働くのかを考えることで、何らかの示唆が得られるのではないか。よく『消費者が変わった』と言い方をするが、数百万年という膨大な時間をかけて進化してきた心が、たかだか100年程度で進化するとは考えられない。変わったのは外部環境であり、そこに心がどう反応するのか。それを考えることが必要だろう。

 こうした考え方に基づき、クロス・マーケティンググループでは、研究セクション『クロスラボ』とグループ会社である株式会社リサーチ・アンド・ディベロプメントが中心となって『サピエンス消費』を提唱している。つまり「消費の主体者を『ホモ・サピエンス』として生物進化の視点から捉え、その本能をつかむ消費行動の読み取り方」というわけだ。もちろん、消費者や生活者といった視点や分析を否定するわけではなく、新しい見方を加えることで新しい気づきを得ようというものである。

バックナンバー