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JR西日本の輸送障害時のCX改善──「事業会社×サービスデザイン×IT化」によるサービス開発とは

第3回ゲスト:西日本旅客鉄道株式会社 小山秀一氏、酒井宏誌氏、髙須優子氏、讃岐依李氏【前編】

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 西日本旅客鉄道(以下、JR西日本)は、電車遅延など輸送障害時における顧客対応の改善に着手。その課題把握と具体的なアクションプランの検討に、サービスデザインを取り入れたプロジェクトを立ち上げたという。本プロジェクトを支援したのは、ITベンダーのヴイエムウェアとサービスデザインによる企業支援などを手がけるデザインエージェンシー、コンセントだ。  本稿では、2018年夏から約半年に渡り進められたプロジェクトの内容を、前後編でお届けする。前編では、プロジェクト立ち上げのきっかけと、その概要、サービスデザインのアプローチをから見えてきたものについて紹介。事業会社とITベンダー、そしてデザインエージェンシー3社によるサービス開発の可能性を探る。

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「顧客をマスに捉えがち」な鉄道事業を、サービスデザインとデジタルの力で見つめ直す

──JR西日本では、輸送障害時における顧客対応の改善にあたり、サービスデザインを取り入れたプロジェクトを進められたそうですね。まずは、プロジェクト立ち上げの背景を教えてください。

西日本旅客鉄道株式会社・小山秀一氏(以下、敬称略):私たちJR西日本グループは、2022年度に向けた5カ年の中期経営計画に取り組んでいます。お客さまをはじめとしたステークホルダーの皆さまの笑顔のために、鉄道事業と物販や飲食、不動産などの創造事業を強化し、「人々が出会い、笑顔が生まれる、安全で豊かな社会」の実現を目指しております。

 しかし、そのスタートの年となった2018年度は、6月に起きた大阪府北部地震や翌月の西日本豪雨、そして9月に関西空港が冠水した台風と、多くの自然災害に見舞われ、電車の運行に大きく影響が出ました。そこで改めて、中期経営計画のもと輸送障害の対策を強化すべきだと、方針を固めたのです。その対策の一つとして着手したのが、お客さまに向けた電車の運行状況のご案内改善でした。

──運行状況のお知らせは、様々な形で提供されていると思いますが、どのような点が不十分であると感じたのでしょうか。

小山:確かに、私たちも情報発信をしております。しかし、事業社側の論理で考えていたことに問題があったと感じています。鉄道事業は、お客さまをマスとして考えてしまう傾向があり、パーソナライズされた情報発信に対応しきれていません。例えば、通勤通学でご利用のお客さま、高齢者の方、さらに海外からのお客さまと、それぞれ知りたい情報やニーズは異なり、多様化しています。先の災害時でも、「情報提供が不十分である」とお困りの声を多数いただいてしまいました。

 理想は、お客さまそれぞれが求めるニーズに合った情報をお届けすることですが、人的リソースでは限界があります。そこで、デジタルの力を活用し、お客さまがご自分で情報を調べ、適切な行動を取れる環境をご提供しつつ、必要に応じて対人でフォローする体制作りを考えました。そして、お客さま視点でサービスを改善するために、デジタルとサービスデザインのプロフェッショナルなパートナーとして、ヴイエムウェアとコンセントの2社にプロジェクトへご参加いただいたのです。

ヴイエムウェア・藤野哲氏(以下、敬称略):ヴイエムウェアは、JR西日本グループのデジタルトランスフォーメーション(以下、DX)において、モバイルとクラウドのソリューションをご提供し、働き方改革をご支援しています。そこで今回のプロジェクトを伺い、顧客起点のサービスデザインに定評のあるコンセントさんと一緒に、取り組ませていただいたという経緯です。

藤野 哲ヴイエムウェア株式会社 デジタルトランスフォーメーション推進室 主席リードソリューションアーキテクト 藤野 哲氏

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