2つのインタビューから判明した「情報伝達フローの複雑化」
──プロジェクトを構成する「調査」「分析と課題のモデル化」「2022年Visionとアクションプランの策定」の3フェーズそれぞれの、具体的な内容を伺います。
古澤恵太氏(以下、敬称略):「調査」フェーズでは、まず調査の方針を立てるために過去の顧客満足度調査アンケートの分析と、JR西日本のお客さまセンターへのヒアリングを行いました。この目的は、お客さまが「もやっ」と感じる、ストレスポイントとなる瞬間が、なぜ、どこで発生しているのかの仮説を立てることです。このヒアリングからお客さまの体験の満足度が低くなる(BAD UX)文脈や接点について4つの仮説を導きました。
そして、4つの仮説をもとに顧客ターゲット像を設定し、ユーザーを集め、インタビューを行いました。対象は(細かいターゲット条件はいろいろあるのですが)普段JR西日本の路線をお使いのお客さま8名です。
西日本旅客鉄道株式会社・小山秀一氏(以下、敬称略):並行して、輸送障害時の実態を知るため、お客さまセンター以外の部署にもインタビューを行いました。対象部署は、駅、車掌区、列車運行全体を管轄する指令所で働く、合計3部署13名です(これとお客様センターへのヒアリングをあわせて4部署17名)。
──社内インタビューは、どのような結果に?
古澤:情報伝達フローの複雑さが課題に挙がりました。従来、輸送障害発生時には、指令所の担当者間で対策を決定し、社内へ一斉放送を行います。そこから、メールや社内掲示板を通じてピラミッド型に情報が広がっていきます。
しかしそのフローが複雑で、情報が駅係員、乗務員やお客さまセンター担当者へ届くのに時間が掛かるほか、伝達事項の過不足が発生し、お客さまのほうがSNSなどで詳しい情報を知っている事象が起きていました。また、駅係員や乗務員が経験則で判断し、お客さまへご案内する属人的な対応も日常化していたのです。