協同組合型コミュニティの可能性を「可視化」と「距離感」から考える
馬田:「可視化」と「距離感」のお話を聞いて、オードリー・タン氏も著書[2]の中で「強い影響を受けた」と述べている、柄谷行人氏の「交換様式D[3]」の概念を思い出しました。柄谷氏は『世界史の構造』や『ニュー・アソシエーショニスト宣言』の中で、交換に注目して社会の歴史を整理しています。まず原始的な共同体での贈与と返礼をベースとした交換様式Aの「互酬制」、近代国家による支配と保護のような関係性である交換様式Bとしての「再分配(略取と再配分)」、昨今のベースとなっている市場を中心とした交換様式C「商品交換(貨幣と商品交換)」、そしてBでもCでもなく、Aの高次元での回収として、見知らぬ人と見返りの関係にならずに交換する様式であるDです。いまだ名前がないため「X」と呼ばれています。そして「交換様式D」を実現するような協同組合(アソシエーション)方式が、今後重要になるのではないかと提案をしています。安田先生の、距離感の近さから互恵関係が生まれるというお話とも近いのではないかと感じます。