本連載では、海外でのリスキリングの潮流に早くから注目し、2022年10月に『自分のスキルをアップデートし続けるリスキリング』(日本能率協会マネジメントセンター)を刊行した後藤宗明氏(一般社団法人ジャパン・リスキリング・イニシアチブ代表理事、SkyHive Technologies日本代表)と共に、ポストコロナ時代の働き方、リスキリングと人材マネジメントのあり方について検討していく。前回の曽和利光氏(株式会社人材研究所 代表取締役社長)との対談が好評だったため、再びゲストに招いた。計画的流動性の担保によりじわじわ自ら変わりつづける組織を実現するものは何か、今求められる組織を変える人事施策とは何か。具体的にその実務のエッセンスを聞いた。
新卒採用は“変身願望のない人”をリファラルで
計画的人材流動性を実現する一気通貫の人事施策①採用
後藤宗明氏(以下、後藤):先日の対談([1]、[2])では、「計画的人材流動性」に基づくマネジメントでじわじわと人材が入れ替わり、リクルートという会社が時代とともに大きく変わることができたというお話をしていただきました。他にこういうやり方をしている会社は、ほとんど存在しないですよね。
曽和利光氏(以下、曽和):珍しいですよね。よく「リクルート以外に事例は?」と聞かれるのですが、なかなか見つかりません。
後藤:だからこそ、『定着と離職のマネジメント 「自ら変わり続ける組織」を実現する「計画的人材流動性」とは[3]』(ソシム)を多くの企業の方が読むべきだと思いました。改めて、「計画的人材流動性」を実現するための一気通貫したプロセスを教えていただけますか。まずは採用から、ということになると思いますが。
曽和:採用で一番大事なのは、「しがみつかない人」を採るということです。本にも書きましたが、当時の人事部長に「迷ったときはどうしますか?」と聞いたら「潔い奴かどうかを見る」と教えられました。「リクルートという会社から求められなくなれば、自分を求める別のところに行くよ」と言えるような人を選ぶと。逆に「変身願望」がある人は、どんなに優秀でも前向きでも、採用の場面では評価されませんでした。
後藤:変身願望、ですか?
曽和:「リクルートに入れば、変われるかもしれない」というような願望です。そのように会社に依存するマインドではなく、「リクルートを変えてやろう」というぐらいの人に入ってほしいと考えていました。「ここは違う」と思えば出ていくような、キャリア自律している人です。だから、基本的にはリクルートのファンではない人を採っていました。
もうひとつ、以前の対談でもお話しましたが、「個別具体的な何か」をやりたい人は採りませんでした。何かやりたいんだけど、その何かが分からない、という人を求めていたんです。特定の領域に対するこだわりが少ない人の方が可塑性(かそせい)はあって、あっという間に変われるんです。
この2つが採用のコアです。可塑性が高くて、それでも合わないと思えば出ていくという人たちで構成されていると、会社がじわじわと変わっていくための他の施策も全部やりやすいんですよ。
後藤:そうですよね。
曽和:これを実現するための細かな手法としては、広告ではなくリファラル採用を中心にするといったことがあります。
広告を見て応募していただく人は、基本的には会社のファンであり、就活意欲の高い人です。逆に、就活意欲の低い人というのはめちゃくちゃ自信があるか、大企業や有名企業なんてどうでもいいと思っている人のどちらかなんですよね。そういうある意味では「就活を頑張っていない」層を、社員や内定者からの紹介でリーチして採っていくというのが基本戦略でした。
[1]やつづかりえ『なぜリクルートは離職率8%前後の維持を目指したのか──じわじわと組織が変わる「計画的人材流動性」が鍵』(Biz/Zine、2023/04/11)
[2]やつづかりえ『リクルート流「計画的人材流動性」のつくり方──インフォーマルネットワークとぐるぐる図の効果とは?』(Biz/Zine、2023/04/12)
[3]曽和利光『定着と離職のマネジメント「自ら変わり続ける組織」を実現する「計画的人材流動性」とは』(ソシム、2022年12月)
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