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パーパスは浸透させるものなのか──JTの取り組みに学ぶ、策定後に存在する重要な二つの活動

ゲスト:日本たばこ産業株式会社 人事部 課長代理 藤原健人氏

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パーパスに具体的な方向性を示す「行動指針」の勘所

──では、「パーパスについて考える機会を作る」ために、JTでは具体的にどのような取り組みを行なっているのでしょうか。

藤原:一つの取り組みとしてはコーポレート部門の「Values/Behaviors」を策定しました。Values/Behaviorsとは、従業員がパーパスを実践する際の行動指針であり、その時々に取るべき行動のガイドラインの役割も果たします。

藤井:Values/Behaviorsの策定は非常に素晴らしい取り組みだと思います。特に素晴らしいのが、「説明しすぎていないこと」ですね。良くも悪くも、パーパスは抽象的なので、それを補足する何からの言葉が必要です。しかし、それをあまりに具体的な言葉に落とし込んでしまうと、パーパスの利点である曖昧さや思考の余白のようなものを剥ぎ取ってしまい、一義的な解釈しかできなくなってしまいます。

 その点、Values/Behaviorsはちょうどよい抽象度を保っており、具体的な行動を強制するようなニュアンスがありません。言い換えると、Values/Behaviorsは「Doing」ではなく、「Being」で行動指針を示している点が長所だと思います。

画像を説明するテキストなくても可
図版出所:日本たばこ産業株式会社「JTグループにおける人的資本」(人財への投資と成長機会の提供)/クリックすると拡大します

藤原:たしか以前、藤井さんと「Values/Behaviorsは“道”のようだ」という話をしましたよね。もしパーパスが北極星だとするならば、Values/Behaviorsは北極星の方角に向かうための道のようなものだと。「道」というフレーズは秀逸で、武道や茶道などに用いられる「道」のニュアンスも含んでいます。武道や茶道は、どれだけ修練を積んでも究極的には極めることはできず、一生修行を続けなければいけません。それと同様に、Values/Behaviorsも完璧に体現することはできないが、その体現に向けて試行錯誤を促すものであるべきだと思うんです。

パーパス策定後に存在する二つの重要なアクション

──そもそも、どのような経緯でValues/Behaviorsは策定されたのでしょうか。

藤原:実はグループパーパスとValues/Behaviorsの策定には1年ほどのタイムラグがあります。パーパスを策定した後に、従業員へのアンケートを実施したり、全国の拠点で経営層参加によるミーティングを実施したりと、さまざまな施策を実施してパーパスの浸透を図ってきました。そのなかで、従業員たちの戸惑いが可視化されたというのが大きかったです。

 先ほどもお話しましたが、従業員はパーパスの抽象的な言葉だけを提示されても、どう行動してよいのか困惑してしまいます。だからこそ、彼ら彼女らにパーパスの実践を促せるような行動指針が必要だと考えました。

 実は以前、私は「パーパスと行動指針を同時に策定すべきだ」と思っていたんです。そのほうが従業員とのコミュニケーションのコストを減らせますから。しかし、今振り返ると、両者の策定にタイムラグを設けて、従業員とのインタラクティブなコミュニケーションを経てValues/Behaviorsを策定したのは、正しかったと思います。まずは、パーパスを提示して、それに対する従業員たちの反応を確認しなければ、どのような行動指針を示せばよいか見えてこないですから。

藤原健人

藤井:それはおっしゃる通りだと思いますね。おそらく、パーパスの浸透には二つのフェーズがあって、一つ目は社内における「認知」のフェーズです。ここでは、さまざまな施策を通じて、パーパスそのものを広く知ってもらい理解を促します。そして、二つ目が「行動」のフェーズです。つまり、理解したパーパスを踏まえて、どのような行動をすべきか組織全体で見極めていく必要があります。JTにとっては、その二つ目のフェーズに当たるのがValues/Behaviorsの策定だったのではないでしょうか。

藤原:なるほど。非常によくわかります。特に、パーパスの実践については従業員も含めて組織全体で考えていかなければいけないというのは、その通りだと思います。組織運営上、パーパスについては、ある程度限られたメンバーで策定せざるを得ません。しかし、パーパスを組織のなかでどのように位置付けていくかということについては、従業員とのコミュニケーションを通じて見出さなければいけないと思います。

 そもそも、私はパーパスを「浸透させる」という表現自体が好きではないんです。浸透という言葉には一方通行に物事が広まっていくというニュアンスがありますよね。そこにはインタラクティブなコミュニケーションが想定されていません。もし「パーパスを策定したが、なかなか組織が変わらない」という問題があるとすれば、それは「浸透」のような一方通行のコミュニケーションが原因なのではないかなと思っています。

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従業員の自発性に火をつけ、「最初の一歩」に誘う

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この記事の著者

島袋 龍太(シマブクロ リュウタ)

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

提供:株式会社プレイド

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