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レイ・イナモト氏が語る、AI時代の経営戦略としてのブランド論──「信頼が循環する構造づくり」とは

ゲスト:I&CO 創業パートナー/クリエイティブ・ディレクター レイ・イナモト氏

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AnthropicとOpenAIの比較が示す「言葉より行動」の真意

栗原:「信頼」が重要だという点に異論はありませんが、具体的に企業はどう行動すべきでしょうか。書籍では「USP:Unique Selling Proposition(独自の機能)」よりも「POV:Point of View(独自の視点)」が重要だと述べられていますね。

イナモト:機能を売る時代は終わりました。優れた機能もすぐ競合に模倣され、コモディティ化(汎用化)してしまうからです。大切なのは、「その製品がなぜ存在するのか」というブランド独自の視点、すなわち「POV」です。

 「言葉より行動」がすべてです。たとえば自動運転の「Waymo(ウェイモ)」。無人タクシーは当初「危ない」というイメージで見られがちですが、データ上は人間より12倍安全です。ウェイモは走行データを公開し、車内で乗客を安心させるUI(操作画面)を実装するなど、「命を預けられる仕組み」を積み上げることで信頼を築きました。

 最新の事例では、AI企業のAnthropic(アンソロピック)が象徴的です。彼らは「安全性を第一にする」というPOVに基づき、軍事利用の可能性があった政府との巨額契約を蹴りました。一方でOpenAIは即座にその契約に手を挙げた。結果として、わずか数ヵ月でBtoB(B2B)市場における企業の導入シェアが逆転しました。目先の利益よりも信念を貫く「行動」が、圧倒的な信頼と差別化を生んだのです。一貫性のない意思決定は、静かに、しかし確実に信頼を削っていきます。

ファネルから「ブランドのフライホイール」へ

栗原:従来のマーケティング手法である「ファネル」の考え方だけでは、ブランド構築は難しいのでしょうか。

イナモト:「認知→関心→検討→購入」という一直線のファネル(漏斗)モデルは、「購入」をゴールとしており、その先の顧客との関係性が考慮されていないという致命的な弱点があります。今の時代は、エネルギーが蓄積され回転が加速していく「フライホイール(はずみ車)」の概念で考えるべきです。

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 私が提唱する「ブランドのフライホイール」は4つのステップで構成されます。

  1. COMPANY:明確な理念(ミッション)を持つ「会社」が
  2. PRODUCT:その理念を体現した「プロダクト」を生み出し
  3. CUSTOMERS:プロダクトに魅了された「顧客」が信頼を寄せ
  4. BRAND:育った「ブランド」が「会社」を差別化する

 認知度さえ上げればいいという発想は、服を着飾るだけで中身を磨かないのと同じです。たとえばAppleは、広告以上にiPhoneなどのプロダクト自体の完成度や店舗での一貫した体験を通じて、圧倒的な信頼を「再現」し続けています。ブランドとは「つくる」ものではなく、信頼が循環する構造の結果として「生まれる」ものなのです。

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AIに代替できない人間固有の「美意識」や「判断」

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この記事の著者

栗原 茂(Biz/Zine編集部)(クリハラ シゲル)

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