変革を支えた創業50年の「記録を残す」DNA
中村:一朝一夕にできることではありませんでしたが、当社には創業50年を超える歴史の中で培われてきたカルチャーがありました。実は、1972年に建築した1棟目から、お客様の履歴ややり取りの記録を連綿と残し続けているのです。
これは業界的にも非常に珍しいことだと思います。建てた後の記録をしっかりと引き継ぎ、残していくことこそが自分たちのブランドの根幹であり、DNAであるという意識が社員の中に根付いていました。そのため、お客様とのやり取りをデータとして記録していくという文化そのものは既に存在していたのです。
新しいシステムを入れた当初は、「急にいろいろと入力を求められて大変だ」と戸惑う現場の声もありました。しかし、時間をかけて根気よく目的を伝え続けることで、「記録を残し、共有する」ことが当たり前の業務として定着していきました。この過去から続く歴史の積み重ねが、現在の変革を支える非常に強力な土台となっています。

野口:意識を変えるところから始め、お客様の満足を第一に考えるという根本の思想が現場に浸透するまでには時間がかかります。しかし、当社には長年培ってきたその土壌があったからこそ、「ALL for LONGLIFE」という新しい旗印のもとで、点と点だった顧客接点を線として結びつける取り組みへと、全社を挙げて力強く踏み出すことができたのだと考えています。
顧客接点を「点」から「線」に変える「HEBELIAN NET.」
梶川:デジタルを活用した顧客との接点づくりについて、具体的にどのような取り組みをされているのでしょうか。
野口:お客様向けのネット会員組織「HEBELIAN NET.」を運営しています。現在、新規でご契約いただいた方の約85%に会員になっていただいており、既にお住まいの方も含めると全体の7割強が会員化されているという強固な基盤になっています。
数年おきに行われるリアルの定期点検が「点」の接点だとすれば、デジタルは必要なときにいつでもつながれる「線」の接点です。サイトでは、四季折々のトピックスや建物に関する情報など、お客様の興味関心に合わせたコンテンツを配信するほか、マイページで建物のメンテナンス履歴や電気の使用量なども確認できるようになっています。

梶川:顧客からのアクションを待つだけでなく、企業側から継続的なアプローチが可能になったのですね。
野口:はい。お客様が困ったときにすぐ対応するのはもちろんですが、こちらから気づきを与えるような発信も行っています。
さらに、災害時の対応にも大きな役割を果たしています。「LONGLIFE AEDGiS(ロングライフイージス)」という防災情報システムにコミュニケーションサービスを追加し、災害時にご自宅の被害状況を双方向でやり取りできる機能を「HEBELIAN NET.」の中で運用しています。これは、お客様から「安全です」と返信をいただいたり、逆に被害があれば「こちらから優先して点検に向かいますね」と連絡したりできるものです。安全なときには安心を届け、危険なときには情報をトリアージして迅速な保全に向かう。デジタルを通じて、万が一のときにも寄り添える機能を持たせています。
梶川:お客様とのデジタル接点(HEBELIAN NET.)が強力な武器になっていることはよくわかりました。しかし、それを裏側で支える「社内の情報連携」が伴わなければ、本当のCX向上にはつながりませんよね。社内側はどのように整備したのでしょうか。
