現場の連携を生む統合CRM「LL-Navi」
中村:お客様を中心に置くバリューサイクルを実現するためには、気持ちだけでなくシステム面でのサポートが不可欠です。以前は、リフォーム担当者だけが見るシステム、メンテナンス担当者だけが見るシステムと、情報が分断されていました。そこで、全事業を統合したCRM「LONGLIFE-Navi(LL-Navi)」を導入しました。
このシステムに、様々な部門の担当者が一人のお客様の情報を書き込んでいきます。我々の強みは、デジタル空間でのやり取りだけでなく、リアルの接点でお客様のご自宅に上がり込める点にあります。デジタルの動きとリアルな接点での出来事が、複層的に情報として重なっていく仕組みです。
野口:さらに、お客様の生の声や情報をいかに効率良く収集し、現場で活用するかが重要です。それぞれの部署で「欲しい情報」は異なりますが、すべてを現場の営業担当者にヒアリング・入力させると負担が大きすぎます。
そこで、スマートフォンから約2分で回答できるWebアンケートをお客様にお願いし、その結果がそのままCRMに飛んで関係者全員に共有される仕組みを作りました。また、選択式で答えられない個別の対面情報についてはテキストで入力し、登録されると関係担当者にアラートが飛ぶようにしています。マーケティング部門がダッシュボードで動きをチェックし、放置されている案件があればフォローを入れるなど、情報の質と運用体制の両面から質を高めています。

現場の壁をどう越えた? 体制と評価軸の変革
梶川:新しいCRMを入れたり、他の部署の情報を入力したりするプロセスにおいて、「仕事が増える」といった現場からの反発はなかったのでしょうか。
野口:よくある失敗例のとおり、「面倒くさい」「どんなメリットがあるのか」という声は当然ありました。システム開発においては、業務そのものを変えなければならないため、現場との合意形成が最も困難です。ここを乗り越えるには、会社としての戦略が明確であり、それを推進する役員の強い旗振りが不可欠でした。合意さえ取れればKPIを追うフェーズに入れますが、その前提が不十分なままだと単なる努力目標で終わってしまいます。
中村:体制と評価軸の変更も同時に行われました。まず体制面では、各エリアのトップであるエリア本部長のミッションが大きく変わりました。これまでは売り上げボリュームの大きい新築ばかりに目が向いていましたが、これを「新築からアフターまですべての事業」に目が向くようにしたのです。これにより、お金や人の使い方などが全社最適へと変わりました。
また、評価面では「アシスト賞」のような仕組みを設けました。自分の部署ではないお客様の接点を持っている別の事業の担当者が、横パスを出したり商談に同行したりする行動を、「ALL for LONGLIFEを体現した」として表彰するようにしたのです。
野口:これは口で言うほど簡単ではありません。リフォーム営業からすれば、目の前の600万円の工事を受注したい。しかし、アパート併用住宅への建て替え(1億円以上の受注)を提案するほうがお客様の老後にとって最適な場合があります。以前なら自分の売上のためにリフォームを提案していた現場が、今では新築営業を連れていき、「住み続けるならリフォーム、老後を考えるなら建て替えもありますよ」と、お客様に選択肢を提示できるようになった。評価制度を変えることで、本当の意味での顧客中心の提案ができるようになったのです。
梶川:評価軸まで変えることで、現場の意識が根本から変わったのですね。では、そうした組織改革とシステム導入の成果は、実際の「数字」や「事業の成長」としてどのように表れてきているのでしょうか。
