戦略を組織活動へ落とし込む「2回の翻訳」とコングルエンス・モデル
栗原:『HRBP――戦略実行を支援する人事』にある「戦略実行支援の全体像」について教えてください。概念的な戦略を、どう現場の行動へ落とし込むのか。多くの読者が気になるポイントだと思います。
加藤:概念的な戦略から組織活動へ跳躍するには、「2回の翻訳」が必要です。
- 翻訳1(ビジネスモデル → ビジネスプロセス):収益構造(ビジネスモデル)を、具体的な業務手順や段取り(ビジネスプロセス)へ翻訳する。
- 翻訳2(ビジネスプロセス → 組織活動):その手順を、現場が実際に動ける「組織活動」へ翻訳する。
このタテ糸を通す軸となるのが「コングルエンス・モデル(整合性モデル)」です。戦略とリーダーシップの下で、以下の4要素を整合させます。
栗原:加藤さんの前著『両利きの組織をつくる――大企業病を打破する「攻めと守りの経営」』(英治出版)で、一番象徴的だったのが「コングルエンス・モデル(整合性モデル)」でした。
加藤:ありがとうございます。残念なことに、多くの事業責任者はKSFを明確に言語化できていません。たとえば「製品売り」から「ソリューション売り」へビジネスプロセスが変わるなら、KSFも変わります。KSFを中心にピープル・カルチャー・ストラクチャーの整合性を整える(アラインメント)ことこそが、組織変革の要諦です。
競合価値観フレームワークで“組織の前提”を再設定
栗原:今回の書籍で紹介されている「競合価値観フレームワーク(CVF)」と、ウルリッチの4象限の対応関係も非常に興味深いです。
加藤:ミシガン大学ロス・スクール・オブ・ビジネスの組織論のキム・キャメロン教授らが提唱したCVF(Competing Values Framework)は、組織文化を4つのタイプに整理したものです。
日本の大手メーカーは「家族型」や「官僚型」に偏る傾向があります。しかし新規事業を目指して「革新型になりたい」と掲げても、活動の重心を動かさなければ組織は変わりません。自分たちの成功体験の前提を直視し、「戦略に合わせてどの重心へ振り替えるか」を議論する必要があります。
実は、CVFの4象限はウルリッチの4象限とも重なります。家族型なら「従業員チャンピオン」、官僚型なら「管理エキスパート」、市場型なら「戦略パートナー」、革新型なら「変革推進者」が特に求められる。組織が成果を生み出す前提を捉え直すこともHRBPの重要な役割です。



