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マインドフルネス研究者ハンター氏は、なぜ「マインドフルネス導入」に懐疑的なのか

特別鼎談:ジェレミー・ハンター氏×入山章栄氏×佐宗邦威氏 中編

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瞬時に自らを見つめ理解する力を得る「マインドフルネスの効用」

佐宗:(biotope 代表取締役社長)
 ここからはもう少し、ハンターさんのセルフマネジメントプログラムに関して伺いたいと思います。前編でお話しいただいた、「何に自分の意識を向けるのか」という注意の向け方によって、人の人生が決まってしまうというのはとても興味深い点でした。自分の思考の偏り、いわゆるメンタルモデルに気づく「メタ認知」の必要性をおっしゃっていると思うのですが、自身のエゴに気づくことはとっても難しいことですよね。ハンターさんのプログラムでは、その時にはどのように伝えるのですか?

ハンター(ドラッカースクール准教授):
 実はそこについては問題にしていません。どのような生き方をしなさいとか、世界はどうあるべきだとか言いたいわけではありません。それは自問自答すべきことですから。

 私のアプローチは実践的です。プログラムでは、参加者はシンプルに自分に問いかけます。「私はどんな結果を望んでいる中、実際、どんな結果を得たのか。思い通りにいったのか」と。思い通りでないのなら、どんな行動がその結果につながったのかを振り返ってもらいます。そうすると、緊迫した場面での自分の感情的な反応がいつのまにか人間関係を阻害し、必要な協力を得られなくなっていた、といったことに気づくのです

  これは「経験への帰納的アプローチ」です。普通の人なら、20代では自分の問題を周りの人のせいだと思っていたとしても、経験を経て30代にもなれば自分の行動に問題があったと理解できるようになるものです。

佐宗:
 なるほど。日々、自分の意識と実際に起こったことを意図的に振り返っていくことで、自分の場合の原因と結果の関係を帰納的に考えていくのですね。

 それではもう一つ質問です。この帰納的なアプローチを促すために、第三者が支援できることはありますか。たとえば「あらゆることを記録し、フィードバックする」など。というのも、私はデザインコンサルティングの仕事をしているのですが、私は「ものごとを可視化できていないことが、実行する上で大きな障害になっている」と感じるからです。

入山(早稲田大学ビジネススクール准教授):
 実はこのインタビューシリーズで、日本で注目の若手起業家であるメタップスの佐藤航陽氏にもお会いしました。彼の話で興味深かったのは、あらゆる習慣や事象を記録するというのです。そしてそれをもとに1年前は何をやっていたかなど振り返り、同時に今何をなすべきか、将来何をしたいかの判断材料にすると言っていました。

ハンター:
 それはドラッカーが提唱したアプローチですね。

入山:
 ええ!本当ですか?

ハンター:
 どのような成功や失敗があったかを書き残し、なぜそのような結果になったか見るというものですよね。マインドフルネスの効用は、そうしたことを瞬時に行えるということにあります。

 「私はこうした思考をもって、この結果に至った。そういえば、私はこうしたパターンを何度も繰り返している。いつも何かが間違った方向にいくと思って、そして、そう考えるからこそ行動を起こさず、行動を起こさないから行き詰まってしまっている」と。自分自身を観察し自分に気づき、理解し始めることができます。

 私は認知主義者ではなく、現象学の立場にいます。ですから、人々がものごとをどのように経験するのかに興味があります。自分のパターンを振り返った上で、その結果を望ましいと思っているのか、そして、この経験を身体が、行き詰ったと感じるのか、重たく感じるのか。どのように感覚として身体が感知しているのかが大切です。

タイトルジェレミー・ハンター氏(クレアモント大学院大学 P.Fドラッカー経営大学院 准教授 / Executive Mind Leadership Institute 代表)
「Self Management」理論研究の第一人者。“人生の豊かさ(Wellbeing)”と“仕事のパフォーマンス最大化”について研究。ミハイ・チクセンミハイ(世界的に著名な認知心理学者で「フロー」理論の提唱者)とともに、クレアモント大学院内にQuality Of Life Research Centerを設立。現在は、クレアモント大学院内に「Executive Mind Leadership Institute」を設立し、代表をつとめる。コンサルティング実績は米トヨタ自動車営業、ロサンゼルス警察など、企業、公的機関含め多数。ハーバード大学院にて修士、シカゴ大学にて博士課程修了。

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