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サピエンス消費

なぜモノが売れないのか──“刺激‐反応化”する消費を「進化心理学」から読み解く

サピエンス消費:第1回

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 本連載では、筆者のラボが研究に取り組む「サピエンス消費」について紹介する。サピエンス消費では、リサーチの対象を生活者、消費者、ショッパーなどと狭く捉えるのではなく、「生物としてのヒト」=「ホモ・サピエンス」として捉え直すことで「人間そのもの」に迫り、生物進化の過程でサピエンスに備わった本能の視点から消費を読み解く(洞察する/インサイトする)というアプローチを取る。  連載初回となる今回は、サピエンス消費の基本的な考え方について解説する。消費行動に関するリサーチとそれを通じたビジネスアイデア創出に携わっておられる方々のヒントになれば幸いである。

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「刺激‐反応化する消費」とは何か──自動的な反応と後づけの思考、その行動は連鎖する 

 商品を作れば売れるという時代はとうの昔に過ぎ去り、今や日本は失われた20年どころか30年とも呼ばれる長期停滞の時代に突入している。巷では「モノが売れない時代」「消費の低関与化」などと言われ、多くの商品がコモディティ化(同質化)し、価格競争に陥る状況がそこかしこに見受けられる。そんな中、とりわけ消費市場で商品が売りづらくなっている原因として、筆者は、消費の「刺激‐反応化」に注目している。

 刺激‐反応とは、外部からの様々な刺激に対して、買い手が「深く考えることなく」「なんとなく」「直感的に」商品を選択(反応)することを意味する。これは「刺激」とそれに対する自動的な「反応」が存在するだけで、その間に「考える」(思考する)という行為が欠落した状態である。この状態は「なぜ買うのか?」(購買動機)をブラックボックスにするので、消費は移ろいやすく捉えどころのないものに映る。売り手は買い手に対して何を提供すべきか予測が立てづらくなり、ビジネスの不確実性は高まるばかり。なぜその商品を買ったのか、と聞いてみても、当の顧客は後付けの理由を教えてくれるだけである。顧客本人さえ、刺激‐反応で買っているので真の理由など知らないからだ。

 ご存じのように、スーパーマーケットでの買い物では、事前に何を買うかを決めてから買いに行く計画購買よりも、売り場で何を買うかを決める非計画購買の場合の方が多い。しかも自分が何を買ったのか覚えていない場合も多いという。非計画購買とは、売り場の刺激(商品、POP、値引き、BGMなど)に対して自動的に反応する刺激‐反応的な行動である。こうした刺激‐反応的な行動は、AIなどテクノロジーの進歩を背景に、通販サイトのレコメンデーション機能のような装置によって、今後ますます拡大していくだろう。Amazonを閲覧していると様々な商品がレコメンデーションされ、買うつもりもなかったのに刺激‐反応的に買ってしまう、といった風景は珍しくなくなった。さらに、スマホの普及によって、SNSやレビューサイトを通じ、他者による商品の経験レビューを手軽に知ることができるようになり、ブランドではなくレビューが刺激となって自動的な選択(反応)が引き起こされる、といったタイプの刺激‐反応化も拡大している。

刺激反応化する消費Aさんは商品に関する刺激に自動的に「反応」(行動)し、後付けでその理由を「思考」する。さらにAさんの「反応」や「思考」はSNSなどを通じBさんにとっての刺激となり、Bさんはそれに対し自動的に「反応」し、後付けでその理由を「思考」する…というように、刺激-反応は連鎖していく。

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「サピエンス消費」とは何か──「刺激-反応化」する消費行動へのインサイト

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この記事の著者

水師 裕(スイシ ユタカ)

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