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経営戦略としての知財

“経営戦略としての知財”を実現する「IPランドスケープ」──知財立国宣言後の日本企業の実態とは?

第1回

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 「知財戦略の立案は知財部門ではなく、経営・事業企画部門の主導で行うべき」というのが自分の考えだ。2002年の政府の「知的財産立国」の宣言により、経営・事業サイドから知財部門への期待は高まったが、「誤解」に基づく期待も生んだ。そもそも知財部門は経営や事業を「支援」する部門である。一方、知財は経営および事業に決定的な影響を与える点で他の間接部門と異なる。したがって、知財は、あくまで経営・事業戦略と連携・連動させてこそ最大の効果を得る。しかし、欧米と比し、日本企業では知財部門と経営・事業部門との距離が遠い。この距離を縮め、連携・連動を可能にするものが「IPランドスケープ」である。本連載では、IPランドスケープが必要な背景、意義、実際の活用事例等について紹介する。

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知財戦略の立案は経営企画部門、事業企画部門の業務

「知財戦略の立案は知財部門の業務ではない。経営企画部門あるいは事業企画部門の業務である」

 上記のような考え方に対して、読者はどのような感想を持つだろうか。違和感か、もしくは共感だろうか。また、下記のようにさらに踏み込んだ考え方に対してはどうだろうか。

「通常の企業には『知財戦術』はあっても経営戦略や事業戦略から独立した『知財戦略』というものはそもそも存在しない。あるとすれば、知財を最大限活用した『経営戦略』、あるいは知財を最大限活用した『事業戦略』である」

 ここで書いた「通常の企業」とは、何らかの商品やサービスを個人あるいは法人顧客に販売・提供する会社、という意味であり、ほとんどの企業がこれにあたるであろう。「通常の企業ではない企業」というのは、このような事業会社ではなく、例えば、自らの商品やサービスなどの事業を持たず、他社に特許権侵害であると警告すること、訴訟を仕掛けてその賠償金によって利益を得ることを企業の究極目的あるいは企業の存在意義としているような企業を指す。

 このような「通常の企業ではない企業」を総称して、「パテントトロール」と呼ぶ。このような企業は、知財そのものから利益を生み出そうとしているのであるから、「組織の維持・発展のための方針および計画」と経営戦略を定義する限り、「経営戦略=知財戦略」であると定義できる。

 逆に言えば、このようなパテントトロール以外の通常の企業には、顧客に提供する何らかの商品やサービスが存在するのであり、知的財産は元々、そのような商品やサービスを提供する際に支援的、あるいは間接的に用いられるものである。

 したがって、経営戦略や事業戦略から独立した「知財戦略」というのは存在しないはずだというのが、筆者の見解である。他方、経理や人事などの他の間接部門と知財部門が決定的に異なるのは、知財は法律で認められた独占排他の機能を持つがゆえに自社の事業ひいては経営を左右するパワーを持っており、同時に他社の経営および事業の動向を示す貴重な「情報」でもある点だ。その意味で知財部門は他のどの間接部門よりも経営や事業に影響を与えうる。

 もっとも問題なのは、知財部門のこのような位置づけを当該部門はもとより、肝心要の経営者あるいは経営企画部門や事業企画部門が理解していないことである。

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この記事の著者

杉光 一成(スギミツ カズナリ)

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