新規事業とスタートアップの垣根が溶けている
土井雄介氏(以下、土井):前編で「日本の新規事業で気になるトピック」を伺った際、ディープテックによる事業開発の話題が出ました。
他にも最近気になっているトピックがあればお聞かせください。
麻生要一氏(以下、麻生):「新規事業とスタートアップの垣根が溶けている」と感じますね。新規事業のカーブアウトの相談が増え、「新規事業がスタートアップのような動きをし始めたな」と。アルファドライブでは、NTTドコモから預かって立ち上げた次世代キャリア探索事業「はたらく部」が、NTTドコモに戻らずに他社からの資本を入れてRePlayceとしてスピンアウトしました。
大丸徹也氏(以下、大丸):そのトレンドは私も感じています。Relicがリードインベスターとなって、NTTドコモ発のファッション相談サービス「coordimate」をスピンアウトしたのですが、創業者(NTTドコモ社員)がマジョリティを取り、NTTドコモがマイノリティという、ユニークな出口に到達しました。NTTドコモが創業者に意思決定権を大きく譲渡しているので、軽やかに垂直に事業が立ち上がった印象です。

合田ジョージ氏(以下、合田):ゼロワンブースターはグループにキャピタルがあるのですが、そちらで事業会社からのスピンオフ・スピンアウトを支援する「SPINX」を実施しています。参加して頂いている方々の技術はすばらしく、プログラムを通じて新しい事業連携に繋がったケースも出てきています。
及部智仁氏(以下、及部):企業からスピンアウトした事業をquantumで成長させて再び企業にスピンインさせるスピンアウトインの手法は、今でも相談を多くいただきます。ただ今後は、成長した事業を企業に戻すのではなく、他の企業にM&Aで売却したいというニーズも増加していくと思います。企業の資産売却が進み、プライベートエクイティ・ファンド(PE)のターゲットとなるという潮流です。米国では24年はPEによるカーブアウト買収案件が最高水準でした。自社のリソースを他社に移して収益化するというレベルまで、新規事業の捉え方が広がったのだと感じますね。

麻生:一方で、スタートアップが新規事業のような動きをしている事例もありますよね。たとえば、IoTスタートアップのソラコムは、KDDIにジョインしてそのリソースを使いながら成長し、「スイングバイIPO」として上場しました。新規事業側からもスタートアップ側からも、境界線を曖昧にするようなアクションが観察できるのが、最近の特徴ではないでしょうか。