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アシックスの技術・ブランド・経営をつなぐ知財経営──活動主体を知財部から事業部門へ移行させた秘訣とは

LexisNexis PatentSight+ Summit 2026 レポート Vol.1:株式会社アシックス 堀込岳史氏

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調査を武器に他社特許侵害を回避し、独自技術を確立する

 「C-PROJECT」が従来の製品開発と決定的に異なっていたのは、プロジェクトの立ち上げ初期から知的財産部門のメンバーがチーム内に完全に入り込んでいた点にある。単に出来上がった製品の特許を出願するのではなく、研究開発の現場に伴走しながら戦略を練る体制が敷かれた。

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資料提供:株式会社アシックス/クリックすると拡大します

 知財部門に課された最重要任務の一つが、精緻なFTO調査(Freedom to Operate調査:他社特許侵害予防調査)の実行であった。他社が先行して強固に構築していた厚底・カーボンシューズ関連の特許網を徹底的に分析・解剖し、いかに「他社の権利を侵害せずに、アシックス独自の優位性を発揮できるか」という回避・対抗シナリオを技術者とともに描き出した。

 アシックスが注力したのは、徹底的な「アスリートファースト」の視点である。世界中のトップランナーと議論を重ねてその声を吸い上げる中で、ランナーの走法には「ストライド型(スピードが上がるにつれて歩幅が広がる)」と「ピッチ型(歩幅とともに足の回転数も上がる)」の2種類が存在することに着目した。

 この人間特性分析に基づき、ストライド型向けの「METASPEED SKY」と、ピッチ型向けの「METASPEED EDGE」という、世界初となる走法別の厚底レーシングシューズが誕生したのである。

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資料提供:株式会社アシックス/クリックすると拡大します

世界の舞台での勝利と劇的なシェア回復を支えた81の特許

 サイエンスに裏打ちされた独自技術の投入は、瞬く間に目覚ましい成果へと結びついた。2020年のロンドンマラソンでの好成績を皮切りに、東京オリンピックのトライアスロンでは男女ともに同社シューズ着用選手が金メダルを獲得。パリオリンピックでも男子マラソンでバシル・アブディ選手が銀メダルを獲得するなど、世界の表彰台を席巻した。

 このトップアスリートの活躍は、一般市場や陸上界へ「シャワー効果(トップ層での評価が一般層へ波及する現象)」としてダイレクトに伝播した。

  • 正月の大学生駅伝着用率のV字回復:2021年に0%に沈んだシェアは回復し、2026年の大会においてシェア2位の座を奪還した。
  • 市民マラソン、パリやシカゴなど海外の主要大会でも非常に高いシェアを獲得している。

 ビジネスの成功と並行して知財の防壁も強固に構築され、METASPEEDシリーズ関連の特許出願数は累計で81件に達している。

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知財戦略の主役を「知財部」から「事業部門」へ刷新する

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この記事の著者

栗原 茂(Biz/Zine編集部)(クリハラ シゲル)

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