機能の隙間に落ちる課題を拾う──「四次元のファクト把握」と覚悟の重要性
栗原:野本さんがCSOとCFOを兼務されているのも、その「隙間」を埋めるための統合の試みでしょうか。
野本:そうだと自身では理解しています。職能ごとに組織を分化させると、必ずその「間」にこぼれ落ちる課題があります。私はエー・ピーホールディングス時代にCOOになった時に思い悩み、色々と文献や記事などを読み漁った結果、「COOの役割とは、隙間に落ちるポテンヒットのような課題をすべて拾い、掛け合わせてより良い状態へ導くアンカーマンである」という結論に至りました。
現在のソミックMHDでも、お金と戦略の両面から落ちている課題を拾い集めています。自分の担当外の領域への「領域侵犯」を気にしすぎず、「会社のため」と言葉を絞り出して動かせるのは、やはり「覚悟」があるからです。
田村:私もJVCケンウッド時代に「CSO兼CFO」だったので同感です。役割分担ではなく全体として捉えるからこそ領空侵犯が起きますし、それができてこそ変革参謀です。
要素還元主義の失敗でよくあるのが、外部から来た役員が目の前のKPI数値だけを見て切り捨てるケースです。なぜその数字になっているのかという構造(3次元)だけでなく、過去からの歴史、つまり「コンテキスト(文脈)」を踏まえて「四次元」で見に行かなければなりません。これが私たちの重視する「四次元のファクト把握」です。
野本:同じ現象が起きていても、文脈によって取るべきアクションは異なります。ある部署でKPIが未達の背景には、過去の投資の歴史や人間関係の力学があるかもしれない。そうした四次元の文脈を無視し、表面的な数字だけで人と組織を扱うと、変革は絶対に失敗します。歴史の文脈を丸ごと引き受けて統合していくスタンスこそが重要なのです。
異なる強みを掛け合わせる「星型チーム」の構築法
栗原:「四次元の文脈」を理解し、結果責任まで負う人材を社内で探しても、「そんな超人はいない」と絶望しがちです。本書ではそれをチームでやるんだと主張されていますね。
田村:難易度の高い変革をやり遂げる際、1人の「スーパーマン」を求めてはいけません。「丸いバランスの取れた優秀な人」を集めるのではなく、特定の分野が鋭く尖っている人(アイデア、根回し、財務、外部連携など)を集め、組み合わせることで「星型チーム」を作ろうと提案しています。尖っていていいから異なる5人を集める、これが重要なコンセプトです。
野本:スキル以上に重要なのは、「スタンスがズレている人」をチームに入れないことです。本書では「変革人材じゃない人」として3つのタイプを挙げています。
- 高所無策タイプ:知識は豊富だが、とやかく評論家的に語るだけで終わる人
- 権威武装タイプ:「前職では〜」と過去事例ばかり語るが、自分自身の意見が見えない人
- 言語装飾タイプ:流行り言葉を使うだけで、言葉が大きいだけで中身がない人
こうした人が入ると変革が進まないだけでなく、周囲の機運まで削がれてしまいます。
田村:人の組み合わせは掛け算です。「じゃない人」は「マイナス1」なので、掛けた瞬間に全体がマイナスになってしまいます。「覚悟がない人」と「ある人」を混ぜることはダイバーシティとは言いません。
