第4次CVCブームの到来。AIへの危機感と技術偏重からの脱却
梶川:現在は「第4次CVCブーム」だと伺いました。これまでのブームの変遷について解説していただけますか。
西条:これは私独自の区分ですが、第1次ブームは1998年から2001年のインターネットバブル期、第2次は2005年から2007年のリーマンショック前の波です。そして2012年頃から始まった第3次ブームでは、2014〜2016年にかけてITや商社だけでなく、自動車産業をはじめとする主要メーカーなど多種多様な大手事業会社がシリコンバレーに本格進出しました。その後コロナ禍を経て、現在訪れているのが第4次ブームです。
梶川:今回の第4次ブームには、過去と比べてどのような特徴があるのでしょうか。
西条:最大の特徴は「AIに対する強烈な切迫感と危機感」です。「自分たちの既存ビジネスがAIによって破壊され、なくなってしまうのではないか」という強い危機感がCVC設立の強い動機になっています。しかし、シリコンバレーに来られる担当者には研究職や技術出身者が多く、技術単体で勝ち筋を探そうとする「技術オリエンテッド」な思考から抜け出せていません。AI技術自体が急速にコモディティ化する現代においては、技術そのものよりも「その技術を使ってどのように新しいビジネスモデルや産業構造を作るか」というビジネス側のマインドセット変革が強く求められています。
日本企業のCVCが陥る「7つの課題」
梶川:CVCに取り組む日本企業が増える一方で、同じような課題でつまずく企業が後を絶ちません。西条さんから見て、日本企業のCVCにはどのような課題が存在するのでしょうか。
西条:日本企業のCVCが直面する課題は、大きく整理すると以下の7つに集約されます。
- CVCの基本設計が非常に雑であること
- 長期的視点が欠けていること
- 新規領域ではなく既存領域を見てしまうこと
- 技術オリエンテッドな思考になってしまうこと
- 経営陣の期待値調整に失敗していること
- 途中で既存事業部との連携やDX支援などに終始してしまうこと
- CVCの実務経験者が社内にいないこと
特に陥りがちなのが、3つ目の「既存領域への固執」です。本来は新規事業を開拓しなければならないのに、無意識に安全な既存事業の延長線上を見てしまい、結果として投資の本来の意味が薄れてしまうケースが多々あります。また、イノベーションには時間がかかるため、焦りから6つ目のように「既存事業部のツール導入」などに目的がすり替わってしまうこともよく起こります。
そして最も根深いのが、7つ目の「実務経験者の不在」という単純かつ致命的な問題です。外部からプロを採用すれば済む話に思えますが、日本企業特有の報酬体系や社内政治が複雑に絡み合い、外部採用が極めて難しくなっています。これら7つの要因が重なり合うことで、多くの企業が同じ場所で身動きが取れなくなっているのです。
