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グローバルファイナンス看板教授の「アベノミクス評」

フランクリン・アレン教授/WGF東京2013レポート:第1回

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アベノミクスは有効か

一の矢:金融緩和によるインフレ率2%の達成

 「金融緩和とインフレの関係」については、まだ議論が尽くされていないと思う。実際何が起きるのか、いろいろな可能性がある。仮にインフレ率が目標通り2%になるとして、特に大きな問題は、長期金利がどう変化するか、ということである。

 インフレ率が2%になった場合に、仮に金利水準が変わらないとすれば、実質的には、2%のリターンを失うことになる。インフレ率は、2%にとどまるとは限らず、5%になるもしれない。それでも金利が上昇しなければ、海外への資金流出(キャピタル・フライト)が起きるだろう。

 また、長期金利が2.5~3%程度に上昇する可能性もある。しかし、長期金利の上昇は、国債価格の下落によって、金融機関に問題をもたらすだろう。また、長期債務残高がGDPの230%という状況では、国債の金利が2.5~3%になると、その金利をカバーするために5%程度のGDPが必要となる。これも、長期金利が上昇した場合の大きな問題である。

二の矢:公共事業などの財政刺激策

 10.3兆円の支出、これは日本の経済規模を考えると、それほど大きな金額ではない。しかも、過去20年間やってきたことであり、成果を出していない。問題解決につながるとは思わない

三の矢:構造改革

 非常に興味深く、重要なのが、構造改革である。果たして実行できるのだろうか?TPPをはじめとして、実現を阻む問題は多い。そして、成果を出せるのだろうか?ゆっくり進めて結果を待つ時間は無い。

 たとえば、農業の改革は10~20年かければ可能かもしれないが、2~5年以内での実現は、疑問である。個別の企業では、日産は構造改革の素晴らしい成功例だが、例外的な存在だ。ソニーに対しては、投資ファンドのサード・ポイントが事業の分離・上場を要求しているが、うまくいくかどうか。その通りになったら、私には驚きだが。

 現在日本が経験しようとしている構造改革は、1990年代に米国が、1980年代にイギリスが経験した変革である。しかし、日本はより多くの問題を抱えている。たとえば、日本企業の効率化を阻む文化だ。王子製紙は設備の効率化を目的として、北越製紙に敵対的買収を仕掛けたが、実現しなかった。

 日本は1930年代から優れた経済であったが、1943年のピークから戦争を経て、経済規模が半減した。そして戦後、世界で最も速い経済成長を達成したのだ。しかし1990年代には、世界で最も成長が遅い国の一つになってしまった。

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日本経済の本当の問題は何か?

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