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紺野教授が東急を事例に紐解く、両利きの経営の誤解──伝統的大企業のイノベーションを阻む壁と乗り越え方

講演者:多摩大学大学大学院 紺野登氏、東急株式会社 東浦亮典氏

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イノベーションディストリクトは日本で実現可能なのか

 紺野氏は、東急の事例を踏まえて「伝統的大企業こそイノベーションに取り組むべきです」と強調する。

「フランスのイノベーション研究機関の代表であるMarc Giget氏は『伝統的大企業こそ世界のイノベーションの最前線にいる』と主張しています。伝統的大企業こそイノベーションを起こすポテンシャルを秘めているというわけです。だから、伝統的大企業とスタートアップの対立をことさらに煽る必要はありませんし、伝統的大企業は積極的に自己変革し、イノベーションを創出する経営システムを構築するべきだと思います」(紺野氏)

 最後に、紺野氏は近年欧米を中心に広がりつつあるイノベーションディストリクト(Innovation District)について言及した。イノベーションディストリクトとは、特定のエリア内で企業、行政、大学、地域住民などが連携して、有機的にイノベーションを生み出す地域のことだ。英国ケンブリッジや米国アリゾナなどで台頭しており、次世代型のオープンイノベーションイノベーションの形として注目を集めている。

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資料提供:紺野登氏/クリックすると拡大します

 紺野氏は、イノベーションディストリクトの構成要素として「高度に発達したモビリティ」「イノベーションの主体となる企業や大学」「居住エリア」を挙げ、そのうえでイノベーション地区が日本で実現可能だろうかと東浦氏に尋ねた。

 それに対して、東浦氏は「東急が手がけるエリアでいえば、渋谷がそれに当たると思います」と回答した。ターミナル駅である渋谷駅を擁し、メガベンチャーの本社が集積、さらに周辺には居住エリアも有する渋谷は、紺野氏の挙げるイノベーションディストリクトの要件に当てはまる。

 加えて、東急が中心となって展開する創発スペース「SHIBUYA QWS(渋谷キューズ)」では、産官学連携のイノベーション活動が多数進行している。これにより、全国各地から集結するイノベーターたちの連携も促されており、東浦氏は渋谷のイノベーションディストリクトとしてのポテンシャルを近年強く実感していると話した。

 対談の総括として、紺野氏は「東急の事例からもわかる通り、既存事業の再構成を通じた組織変革こそが、両利きの経営の起点です」と聴衆にメッセージを送り、以下のように言葉をまとめて、セッションを終えた。

「米国型のスタートアップを原動力とするイノベーション創出も一つの方法です。しかし、米国と日本ではスタートアップマネーに圧倒的な差があります。そうした条件が大きく異なるのですから、私たちは日本に適した方法でイノベーションを生み出さなければいけません。

 そのときに、伝統的大企業の存在が重要なカギになるはずです。伝統的大企業が自らの強みを生かし、なおかつ経営システムを自己変革しながら、新たな価値を築いていく。それこそが日本型のイノベーションのあり方ではないでしょうか。本日、ご来場の皆さんの企業でも、自社の足元を見直し、そのうえで未来のビジョンを描くアプローチが求められているのだと思います」(紺野氏)

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島袋 龍太(シマブクロ リュウタ)

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