NEC流・高度ファイナンス人材育成の再定義
池側:素晴らしい環境の高度化ですね。一方で、それらを使いこなして事業部と対峙する「人・組織の高度化」については、どのような人材開発プログラムを組まれているのでしょうか。
嘉田:NECではジョブ型人材マネジメントを本格導入したことに伴い、FP&A部門におけるジョブの定義を従来の「経営管理」という単一の区分から、2026年度より明確に「3つのジョブタイプ」へと区分・再定義しました。
1つ目が、ファイナンススキルをドライバーにデータに基づく正確な予実管理やKPIコントロールをリードする「Integrated Finance Analyst」。2つ目が、ファイナンススキルに加えて深い事業理解を武器に、新規事業のビジネスプラン策定やバリューベースプライシング、ROIC経営の展開など事業運営そのものに深く参画する「Business Finance Strategist」。3つ目が、システム改変や先端Tech(AI)の活用、BPR(業務プロセス再設計)をセットで実行してFP&A機能そのもののプロセス改革をリードする「Operations Transformation」です。
池側:NECの経理部門は、昔から研修システムが整っていると有名でした。現在、FP&Aの研修と育成はどのように連動させているのですか。
岡田:私たちはハードスキル(財務会計、管理会計、コーポレートファイナンス、戦略策定、ビジネスモデル理解、統計解析)とソフトスキル(クリティカルシンキング、コミュニケーション、リーダーシップ、プロジェクトマネジメント)の双方において、「Beginner」「Intermediate」「Advanced」という習熟度別の標準スキルセットを一覧化し、スキルセットに沿った研修カリキュラムを用意しています。
これまでの経理や事計のメンバーは、定型業務の処理には長けていても、不確実な環境下で前提や枠組みそのものを疑い、再構築するような「Advanced」のソフトスキルに触れる機会が不足していました。そこで研修では、あえて厳しい経営判断の局面をシミュレーションし、意思決定に参画するための思考法を徹底的に学びます。その上で、実際のアウトプットは現場の事業ラインでのOJTを通じて実践し、データから戦略的な価値を生み出す力を磨いています。
FP&Aを経営幹部の登竜門へ
池側:ファイナンス組織から次世代の経営リーダーを輩出していくためのローテーションやキャリアの展望についてどのようにお考えですか。

嘉田:非常に重要な論点です。これまでのNECでは、長年にわたり同じ事業部の事計に留まる「個別最適の人事」が主流でした。しかし現在は、異なる事業特性やセグメントを経験させるための「人材ローテーションポリシー」をHRと連携して整備し、部門を超えた積極的な人の交流を始めています。異なるビジネスモデルを客観的な数字という共通言語で評価した経験は、ファイナンス人材としての視座を圧倒的に高めるからです。
池側:今後、FP&Aというポジションが、次世代リーダーの最高の訓練場になっていきそうですね。
嘉田:はい、まさにそれを実現したいと考えています。私たちは、業績管理局面における低付加価値な定常オペレーション(単純な業績集計、問い合わせ対応など付随する関連業務)を徹底的に集約・自動化し、削減できた工数をすべて戦略的な高付加価値業務に充当していきます。
池側:JTCと揶揄された時代からAIネイティブカンパニーへと脱皮を遂げるNECのファイナンス変革は、多くの日本企業にとって極めて先進的なモデルケースです。本日はありがとうございました。
