SHOEISHA iD

※旧SEメンバーシップ会員の方は、同じ登録情報(メールアドレス&パスワード)でログインいただけます

おすすめのイベント

企業価値向上のためのFP&A

旭化成のFP&Aが導く事業ポートフォリオ変革──CFO傘下の経営企画と経理財務によるグループ事業管理

ゲスト:旭化成株式会社 木住野元通氏、土家啓路氏、佐藤要氏

  • Facebook
  • X

 日本を代表する総合化学メーカー、旭化成。1922年の創業から100年を超える歴史の中で、同社は繊維やケミカルから住宅、ヘルスケアへと、時代に合わせてその姿をダイナミックに変貌させてきた。現在、同社は「中期経営計画2027」に基づき、さらなる事業ポートフォリオ変革の真っ只中にある。この巨大組織の舵取りを支えているのが、同社で「事業管理」と呼ばれるFP&A(Financial Planning & Analysis)機能だ。伝統的な経理の枠を超え、時には事業の「撤退」という苦渋の決断をデータで裏付け、時には成長分野への「投資」をナビゲートする。旭化成のFP&Aはいかにして事業のパートナーとなり、経営の意思決定を支えているのか。同社の経理・財務、経営企画を牽引する3氏に、FP&Aアドバイザーの池側千絵氏がインタビューし、その実像に迫った。

  • Facebook
  • X

旭化成の伝統的な「事業管理」とFP&Aへの進化

池側千絵氏(以下、池側):旭化成は、繊維から始まり、ケミカル、住宅、ヘルスケアと、日本企業の中でも極めて稀なほど大胆な事業構造の転換を成功させてこられました。まずは、その変遷の中で経理・財務部門がどのような役割を担ってきたのか、木住野さんのこれまでの歩みとともにお聞かせください。

木住野元通氏(以下、木住野):私は1987年の入社ですが、キャリアの2/3は営業や事業企画、事業部長といった「事業側」に身を置いてきました。弊社において経理、財務、経営企画という機能は、歴史の中で合体と分離を繰り返してきましたが、本質的には経営の意思決定に直結する一連の機能として捉えられています。

 旭化成の大きな特徴は、古くから「事業管理」という言葉でFP&A機能を定義し、現場に深く入り込んできたことです。私が経理・財務部長を務めている現在も、グループ全体の制度会計や税務、財務に加え、マテリアル領域の事業に関しては、私の所管で「事業管理」の機能を保持しています。単なる数字の集計ではなく、事業と一体となって未来を管理するのが私たちの伝統的なスタイルです。

画像を説明するテキストなくても可
旭化成株式会社 執行役員 経理・財務部長 木住野元通(きしの・もとみち)氏
1987年入社。財務部門を振り出しに、キャリアの多くを事業側(営業、事業企画、事業部長など)で歩む。2022年より現職。事業視点を持った経理・財務組織の統括と、グループ全体の事業ポートフォリオ変革を支える管理会計体制の構築を牽引している。

池側:経理・財務部長が事業部長を経験されているというのは、非常に心強いですね。土家さんと佐藤さんは、どのような役割を担われているのでしょうか。

土家啓路氏(以下、土家):私は入社以来10年ほどマテリアル領域の事業管理を担当し、その後M&Aコンサルティングへの出向を経て、現在は経営企画部で「グループFP&A」を担当しています。CFOに対し、全社の事業ポートフォリオをどう最適化すべきか、数字の面から提言を行うのが主な役割です。

画像を説明するテキストなくても可
旭化成株式会社 経営企画部 事業戦略室 課長代理 土家啓路(つちや・けいじ)氏
2013年入社。10年間にわたりマテリアル領域の事業管理に従事。KPMG FASへの出向を経て、2023年より現職。グループ全体の事業ポートフォリオ評価や中計策定、投資モニタリングの高度化を担当している。

佐藤要氏(以下、佐藤):私はキャリア入社で旭化成に来ましたが、一貫して「事業管理室」に所属し、現場の事業部とコーポレートをつなぐ橋渡し役を担ってきました。現在は機能性樹脂などの事業管理を担当しており、現場の一次情報を吸い上げ、それを経営の言葉に翻訳して提言する、いわば「事業の参謀」に近い立ち位置で動いています。

画像を説明するテキストなくても可
旭化成株式会社 経理・財務部 マテリアル第二事業管理室 第三グループ 課長 佐藤 要(さとう・かなめ)氏
キャリア入社。自動車メーカーでの経理経験を経て、2019年より旭化成の事業管理室に所属。基礎化学品から機能性樹脂まで幅広い事業の管理会計を担い、現場に密着した意思決定支援を実践している。

事業部と一体化し、CFOへ直結する「ダブル・レポーティング」の強み

池側:日本企業の多くは、管理部門が事業部から切り離され、「数字の報告を受けるだけ」の関係になりがちです。旭化成のFP&A組織は、どのような構造になっているのでしょうか。

木住野:マテリアル領域においては、非常にユニークな「ダブル(デュアル)・レポーティング」体制をとっています。具体的には、事業管理のメンバーは事業側に席を置き、事業部長を支えながら日々の管理会計を回します。しかし、人事権やレポートのメインラインは最終的にグループCFOに直結しているのです。

 これにより、事業部の「身内」として現場の状況を深く理解しつつ、コーポレートとしての「客観的な規律」も維持できる。このバランスが、健全な牽制機能と深い事業理解を両立させる鍵になっています。

画像を説明するテキストなくても可
資料提供:旭化成株式会社/クリックすると拡大します

池側:工場の経理はどうなっているのですか。

木住野:工場にもコーポレートの経理スタッフが籍を置いています。メンバーは工場の原価管理や制度会計だけでなく、地元の税務対応まで幅広くこなします。現場の「泥臭い」数字を一番分かっているのがこのメンバーであり、そこからキャリアをスタートさせることが、旭化成のFP&Aのアイデンティティになっています。

土家:以前、私が事業管理にいた時も、やはり現場の営業や企画担当者と机を並べて議論していました。そこで得られる「なぜこの数字になったのか」という一次情報があるからこそ、経営企画へ上がってくる数字に命が吹き込まれるのだと感じています。

次のページ
P/L偏重からROICとキャッシュ・フロー重視へ

この記事は参考になりましたか?

  • Facebook
  • X
企業価値向上のためのFP&A連載記事一覧

もっと読む

この記事の著者

栗原 茂(Biz/Zine編集部)(クリハラ シゲル)

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

この記事は参考になりましたか?

この記事をシェア

  • Facebook
  • X

Special Contents

PR

Job Board

PR

おすすめ

新規会員登録無料のご案内

  • ・全ての過去記事が閲覧できます
  • ・会員限定メルマガを受信できます

メールバックナンバー

アクセスランキング

アクセスランキング