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長寿企業は保守的ではない。東レ・サッポロ・DNPが語る、持続的成長の“秘訣”

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経営危機をビジネス転換の「成長機会」へと変革する組織力

佐藤:ここからは、経営危機をどのように乗り越えてきたのかについて伺います。100年以上続く中で、戦争や金融危機などありとあらゆる危機があったと思います。最も記憶に残る危機と、その乗り越え方を教えてください。

島地(東レ):私の中で強く残っているのは、2000年代のITバブル崩壊です。全社的に情報通信機材に力を入れていた時期で、業績が急激に悪化し非常に苦しい状況でした。その際、コスト削減や事業構造改革といった守りの基本動作を徹底しつつ、営業現場では「取引ではなく取り組みをしよう」という合言葉を掲げました。1回ごとのトランザクションではなく、お客様といかに深く幅広くお付き合いができるかという顧客価値重視型への転換です。振り返ると、ユニクロ様やボーイング様との関係が深まったのもその頃でした。

武内(サッポロビール):昨今の新型コロナ禍ですね。外食・業務用の売り上げが一瞬にして“蒸発”するという未曾有の事態でした。しかし、このとき大事だったのは長期視点を持つことでした。お客様の生活が一変し、お酒を嗜む外食の場は日常から「特別でプレミアムなもの」へと価値観が変わりました。そこで私たちは、お酒を作るメーカーからお客様の「体験創造業」にならなければいけないと再定義したのです。飲食店さんの生ビールのクオリティ向上や偶発的な体験イベントの強化など、モノ売りから体験の質を変えるアプローチへと、社内のリソースのかけ方を大きく変えました。

杉田(DNP):これまでの150年で一番大きな危機は、戦中戦後の統制経済や労働争議で経営危機に瀕した時期です。しかし、それを乗り越えるために出版や印刷以外の事業領域へ挑戦していこうとしたことが、今のDNPにつながっています。また、ブラウン管から液晶、有機ELへと技術が変わる中で、我々の主力商品が市場から姿を消す危機を何度も経験しました。そのたびにブラウン管用のシャドーマスク技術を現在の有機EL用メタルマスクへと発展させるなど、環境の変化に合わせて事業を進化させ、危機を成長の機会に転換してきました。

知見が通じない「未知の脅威」に立ち向かう長寿企業の現場力

佐藤:現在どの企業も直面しているのがサイバー攻撃です。日本企業は過去の自然災害などを乗り越える知見は蓄積されていますが、サイバー攻撃のような「未知の危機」に対して、長寿企業の強みは活かせるのでしょうか。

武内(サッポロビール):サイバーセキュリティは喫緊の課題ですが、今まで体験したことのないものは完全に防げないという前提に立ち、起きたときにどう対応するかを考えることが重要です。そこで活かせるのが、長年培ってきた「現場力」です。「お客様にモノやサービスをお届けし続けること」を最重要ミッションとしたとき、何かが起こった場合に現場がどう動くべきか。お客様に価値を届け続けるという共通認識が浸透している現場の対応力は、長くビジネスをやってきたからこその強みだと思います。

杉田(DNP):弊社は二つの側面で対応しています。一つは長年培ってきた技術やノウハウです。我々は未公開の大切な原稿や、証券、金融商品、ICカードなど、情報を安全に預かり加工して届ける運用ノウハウを高度化させてきました。これが自社のセキュリティにも活きています。もう一つは、技術だけでは不十分だという認識のもと、ゼロトラストに基づくCSIRT体制の整備や、必要な投資・意思決定を迅速に行う組織力です。サプライチェーン全体への働きかけを含め、仕組みを常に見直しています。

島地(東レ):正直、設問をいただいたときに途方に暮れました。過去の経験がそのまま活かせるわけではありません。ただ、我々の根底には「関係者が集まって考え抜き、知恵を出し合ってやり抜く粘り強さ」という歴史的な積み重ねに基づく自信があります。また、世界中にある300社の子会社をどう管理するかという点では、IT先進国である米国のチームからの提案を採用し、単にチェックリストを埋めるだけでなく定期的に振り返って実証させるという米国らしい実践的な手法も柔軟に取り入れています。

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「大失敗」すらも次なる成長の資産へと変える組織文化

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この記事の著者

梶川 元貴(Biz/Zine編集部)(カジカワ ゲンキ)

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