アレルギーの壁を越えて同じ食卓を囲む、酵母から生まれた「LIKE MILK」
3番手には、アサヒグループジャパンの畠徳望博氏が登壇した。
畠氏が紹介したのは、ビールなどの発酵を促す「酵母」を主原料とした、非動物性・非植物性ミルク「LIKE MILK」だ。乳糖やアレルギー特定原材料等(28品目)は不使用でありながら、牛乳と同等のタンパク質やカルシウムに加え、食物繊維、亜鉛を豊富に含み、コレステロールはゼロという商品だ。
開発の原点には、乳アレルギーを持ち、過酷な治験を重ねてようやく少量の牛乳が飲めるようになった当時9歳の女の子との出会いがあった。食に困っているすべての人に貢献したいという想いから、アサヒの酵母技術と粉ミルクの味作りの技術を融合して誕生。クラウドファンディングでは目標の約700%以上の売上を達成し、スーパーでの販売検証でも同容量帯カテゴリーで約4カ月の期間累計において売上No.1を記録した。今年5月からはエリアを拡大しネット販売も開始。誰もが同じ食卓を囲める未来を目指すと熱く語った。
発表を受け、審査員の麻生要一氏から価格と利益面について問われると、畠氏は1本170〜180円程度を想定し、今後は大量生産により原価を下げ広く届けたいと回答した。また、池田陽子氏からの開発難易度に関する質問には、酵母素材を使いミルクのようなトロっとした滑らかなテクスチャーに仕上げるのが極めて難しく、そこがアサヒの特許申請技術であると明かした。
防衛側をボーダレスにつなぎ金融犯罪に立ち向かう社会インフラ
シード部門の最後を飾ったのは、日立製作所の岸功氏だ。
岸氏が提起したのは、世界で3,000兆円規模に急拡大するデジタルアセット取引の裏で、累計7兆円以上もの犯罪資金が流れている金融犯罪の深刻な現状だ。犯罪が完全にボーダレス化する中、銀行や暗号資産事業者が個別に行うAML(アンチ マネー ロンダリング)対策には、膨大な個別調査、多額の業界コスト、深刻な人材不足という構造的課題がある。
「犯罪者はネットワークで動くが、防衛側は孤立している」という矛盾を解消すべく、日立はこれらを個社の業務から社会インフラへと転換する「デジタルアセット取引AML共同化構想」を発表した。銀行と暗号資産事業者などが、顧客情報ではなく疑わしい取引に関する犯罪シグナルを連携し、共同でモニタリングする仕組みを構築することで、単独では把握しにくいリスクを業界全体で捉えることを目指す。実証実験では、業界横断での情報連携による検知高度化や業務効率化に向けた可能性が確認され、サービス化に向けた具体的な検討を進めているという。
発表を受け、審査員の合田ジョージ氏から社会インフラとしてのスケール可能性や、国内外での事業拡大の見通しについて質問が投げかけられた。これに対し岸氏は、本構想を単なるAMLツールの提供ではなく、金融犯罪対策を個社対応から共同対応へ変える業界インフラ型の事業として位置づけていると説明。参加企業が増えるほど犯罪シグナルやリスク情報が蓄積され、検知力が高まるネットワーク効果を生み出す構造であること、さらに将来的には国内での事業化を足掛かりに、海外展開も視野に入れていると語った。
