組織の長期記憶と徹底したガバナンスで世界に挑むマルチAI
審査会はすでに一定の市場実績を有し、本格的な拡大フェーズに入った「グロース部門」へと移った。トップバッターは、ソフトバンクの上原郁磨氏だ。
上原氏は、垂直統合型で全領域に張って産業革命を起こすためのAIエージェントプラットフォーム 「AGENTIC STAR」を発表した。
簡単な指示を与えるだけでソースコードを自動生成し、エラーが発生しても自己修復する高度な機能を持つ。さらに、世界と戦うための日本の価値として「チーム力」に着目し、組織と職種の階層で知識を管理する独自の「長期記憶」の技術を導入。これにより、営業責任者が見たいカットで数字を管理するBIアプリなどを営業責任者の好みを把握して自動生成できる。
目的把握、実行、監督をそれぞれ担うAIエージェントが、言語モデルを選択しながら長期記憶と連動する。日本企業が懸念する安全性とガバナンスに対しては、専用のセキュアな作業部屋を提供し、ガードレールやブロックする国の設定などを直感的なUIで制御可能にした。ローンチ後わずか3ヵ月で3億円を受注(内諾含む)し、2026年3月時点での見込み案件は約30億円に上るという。
発表を受け、合田ジョージ氏から「投資額が桁違いの海外ビッグテックに長期的に勝てるのか」という本質的な問いが投げかけられた。上原氏は、「ビッグテックへの出資は常に前提に置いている」とした上で、グローバル企業とは様々な共同開発をすでに行っており、彼らと密に連携して見えてくる景色の中で、大企業として事業を推進していくことが長期的に勝つための戦略であると回答。まずは日本企業の海外拠点や、現地企業との提携を通じて実績を拡大していく方針を示した。
API連携だけでリスクなく金融サービスを開始できる「マネーのランプ」
続いて、アコムから生まれたスタートアップであるGeNiEの代表、齊藤雄一郎氏が登壇した。
齊藤氏は、「借り入れは人生の選択肢を増やす投資である」という思想を掲げ、消費者金融業界が抱える「約9割の人が利用に抵抗感を持つ」「審査通過率がわずか3割で、7割をお断りしている」という課題を指摘。これを解決するため、ユーザーが普段使っているアプリ内で自然にお金を借りられる、日本初の組み込み型貸付サービス「マネーのランプ」を紹介した。
資金調達やオペレーション、ライセンスといった高い金融ハードルはすべてGeNiEが担うため、導入企業はAPIを連携するだけで、リスクなく自社ブランドの世界観を活かした金融サービスを開始できる。最短2週間での導入が可能、初期コスト0円、レベニューシェアによる新たな収益源の獲得という価値を提供。
営業開始から1年半で提携社数29社、累計申込者数40万人、累計貸出額は100億円を突破している。イノベーションのジレンマを乗り越え、事業を立ち上げきった実績を示した。
審査員の佐橋宏隆氏から、「導入企業側の具体的な課題感やメインターゲットはどこか」という質問がなされた。齊藤氏は、自社開発が可能な一握りの企業の少し下の層、すなわち「エンドユーザーを多く抱えているものの、金融事業を立ち上げるリソースや資金が限られている企業」が主なターゲットであり、金融参入ハードルを消し去る点に強いニーズがあると回答。また、利用者の2〜3割がこれまでの消費者金融を使わなかった新しい層であり、異なるセグメントの顧客開拓に成功していると語った。
