おもてなしの品質を対話AIで実装、コールセンター自動化の「一番槍」
グロース部門の3番手として、ソフトバンクの子会社であるGen-AXの砂金信一郎氏が登壇した。
砂金氏は、同社の事業を「ソフトバンクが巨額投資するAIデータセンターや国産LLMなどの技術・基盤を、市場の成果と収益に変える『一番槍』である」と定義。通信事業を基盤とし、大規模な自社コールセンターの運営ノウハウや強力なセールスチームを持つソフトバンクにとって、最もシナジーを出しやすく成功確率の高い「コールセンター領域」に特化した対話AIサービスを展開している。
提供するAIは、自然な発話だけでなく、間違った案内を絶対に防ぐガードレール機能を現場仕様のクオリティで実装。昨年末の正式発表からわずか半年で、大手金融機関を中心にすでに26件の受注内諾を獲得。三井住友カードやJALカードでの本番応対も開始されている。経験豊富なコンサルタントが現場の暗黙知を型化する泥臭い伴走を行い、2兆円の国内市場を狙う。さらに、日本の丁寧な「おもてなしの心」を実装した対話AIとして、アジア圏などの海外市場へ向けた新たな輸出産業に育て上げる覚悟を示した。
発表を受け、審査員の麻生要一氏から「スタートアップが捨て身の価格攻勢を仕掛けてくることも想定される中での競合戦略をどう考えているか」との質問が飛んだ。砂金氏は、「国内スタートアップが相手であれば、買収やM&Aを含めて包括的に仲間を広げていく作戦をとる」と回答。さらに価格や物量戦になったとしても、ソフトバンクは勝負どころで桁違いの規模の投資を行うため、「VCから資金調達して動くスタートアップに対し、物量・資金力で勝てる自信がある」と強気な姿勢を示した。
押し売りのないブランド横断試乗で自動車産業の構造を変革する
グロース部門の最後を飾ったのは、東京海上日動からのスピンアウトベンチャー、Carjanyの渡邊裕太氏だ。
渡邊氏が注目したのは、従来の自動車ディーラーにおける「押し売りされる」「十分に試乗できない」といったユーザーの悩みと、「客が来ない」「業務効率が悪い」というディーラーの悩みが引き起こす業界構造のジレンマだ。保険業法の制約を乗り越えて外部に会社を設立した同社は、第三者の立場から試乗プロセスを再定義し、ショッピングモールで運営する新しい試乗モデルを提示した。
ユーザーはオンラインで予約し、セールスを受けることなく最大7日間、ブランド横断で最新の車を試乗できる。一方、ディーラー側には試乗機会と試乗後の比較データを提供し、営業効率の向上をサポートする。すでにイオンモールと資本提携を結び、全国40ヵ所に展開。東京海上日動が持つ全国のディーラー網を活用して試乗車を調達している。今年度の売上予想は約4億円。安全機能を持つ最新の車への買い替えを促すことで、損保業界の根幹に関わる「交通事故の削減」という社会課題の解決にも本気で挑んでいる。
発表を受け、審査員の北嶋貴朗氏からエリア戦略などについて質問がなされた。渡邊氏は、駅近ではなくあえて郊外のイオンモールと組む理由については、「車で来ないとサービスが提供できない場所」に展開することで、レンタカー目的ではなく、本気で車を買い替えたいユーザーにターゲットを絞り込めるため、両社の戦略が完全に合致していると回答した。
