週2回・4時間の圧倒的セッション。議論の質を引き上げた“徹底した準備”
──2026年1月に、ブレインパッドの第2期支援が始まったわけですね。セッション時間も、前回の2時間から4時間へと倍増したと伺いました。
堀川(ブレインパッド):前回も議論が深まると2時間では全然足りなかったんですよね。しかも今回は、2030年のJALのありたい姿を見据えた「顧客コミュニケーション変革」まで踏み込む必要がありました。メンバーそれぞれが自分の普段の業務や立場をいったん離れて、顧客体験を一気通貫でたどり直すのであれば、細切れにせずまとまった時間を取るべきだと考えたんです。
松本(ブレインパッド):そもそも、日本の事業会社において、これだけ密度の高い“超上流”の計画策定を自分たち主導でやり切るのって、かなり難しいことなんです。だからこそ多くの企業は外部に丸投げしてしまうわけですが、JALのみなさんはそこを自分たちの手でやり遂げようとされていた。なので、結果としてそれだけの膨大な時間と熱量が必要になったということです。

──第1期での経験を踏まえ、あえて変えたことはありますか。
堀川(ブレインパッド):いろいろありますが、一番は「準備の量」ですね。JALのみなさんにも事前に宿題を出して徹底的に考えてきてもらいましたし、私たちもアジェンダやゴールの緻密な設計、そして議論が行き詰まったときのための「外部視点からの仮説」を念入りに用意して臨みました。
──実際に、どのような変化が生まれましたか。
豊田(JALデジタル):一番大きかったのは、本当の意味で「顧客視点」で物事を考えられるようになったことです。
「CX10ヵ年計画」の当初から“顧客起点”を掲げてはいたのですが、振り返れば、実際にできていたのは「システム起点からビジネス起点へ」という転換まででした。顧客起点と言いながら、まだ「顧客視点」には立てていなかったんです。今回ようやく、その先にある「お客さまにとっての体験そのものが、どう変わるのか」までしっかり捉えられるようになりました。旅という非日常の空間から、決済やマイルといった日常の領域まで含めて、JALグループとしてお客さまの体験をどう描くべきか。自分自身がお客さまになりきって、JALのサービスに触れている場面を思い描き、「ここがこうだったら、もっと喜んでいただけるはず」と考える。システムやビジネスの“都合”から、お客さまが体験している側へと、立ち位置そのものを移すことができた気がします。
松本(ブレインパッド):私たちから見ても、みなさんの議論自体が圧倒的にレベルアップしていたのを実感しました。「どう進めるか」だけでなく、「どうありたいか」という、当初予定していなかった事業構造の再設計にまで踏み込んで議論できたのは、JALのみなさん一人ひとりの思考力、そしてチームとしての力が格段に上がったからだと思います。
豊田(JALデジタル):振り返ると、あれは議論というより、まさに“セッション”だったと思うんです。ジャズの演奏では、プレイヤー一人ひとりのレベルが高いほど、その場で生まれてくる音楽のクオリティが上がりますよね。だからこそ、各自が事前の宿題で徹底的に考え抜いて、いわば個人練習を積んでくる。そして当日、その成果を持ち寄って、その場でぶつけ合うわけです。でも、ただ自分のソロを聴かせ合うだけではだめで。相手の旋律に耳を澄ませ、自分の音を重ねながら、その場でしか生まれない音楽を、チームでつくっていく。思えば、あの自走期間は、私たちだけで“練習”を積んだ時間だったのかもしれません。そこで一人ひとりの腕が上がっていたからこそ、ブレインパッドさんと再会したセッションでは、毎回のように、質の高い音楽を奏でられたんだと思います。
堀川(ブレインパッド):お互いの噛み合い方が上がっていたからこそ、“即興”の醍醐味も味わえましたよね。4時間夢中で議論していたら、事前に準備していた資料の枠組みすら超えた素晴らしい結論に到達したこともありました。
岡本(JALデジタル):アウトプットも一気にリアリティーが増して具体的になっていて、思考の質が上がっているのを強く実感しました。もう一つ本当によかったのは、メンバーから強い「当事者意識」を感じられたことですね。一度自分たちだけでやってみた期間があったからこそ、「自分たちがJALグループのDXを担う中核だ」という責任感が芽生えたんだと思います。

コストセンターから“バリュークリエイター”へ。変化を楽しみDXを牽引する
──今後の展望について、それぞれの立場で教えてください。
豊田(JALデジタル):これからもこの“超上流”を担い、JALグループ全体の変革を牽引していきたいと思っています。
デジタル部門は、とかくコストセンターとして見られがちです。でもこれからは、デジタルの力で人と空と未来をつなぎ、JALグループが掲げる「多くの人々やさまざまな物が自由に行き交う、心はずむ社会・未来」の実現に向けて、新しい価値を生み出す存在にならなければいけない。私たちはその目指す姿を、コストセンターの対極にある“バリュークリエイター”という言葉で表現しています。
振り返れば、このプロジェクトで考え抜いた課題意識は、後にJALグループが掲げた「JAL Vision 2035」とも重なるものでした。自分たちで本質から考え抜けば、経営の描く未来と自然につながっていくんだなと。その手応えが、大きな自信になっています。
だからこそ、技術力に加えて磨き続けたいのが、“変革共創力”です。構想から、実行、定着まで、最後までやり切る。いわば総合格闘技のような、総合力を鍛え上げ、ビジネス部門と成否を共にし、とことん組み付いていく。それが、これからのJALデジタルに必要なんだと思っています。
岡本(JALデジタル):本当に、2年前とは大違いの、力強い発言だね(笑)。
豊田(JALデジタル):手前味噌ですが、このプロジェクトで一番成長したのは私だと思っています(笑)。「How」からではなく、「What」や「Why」から、そもそも何を実現したいのか、なぜ実現したいのかを考える。そうやって本質を問い直していくと、最後はいつも「本当は、どうしたいのか」という、自分自身への問いに戻ってくるんですよね。本質とも、人とも、自分とも向き合う。その向き合い方そのものを学べたことが、何より大きかったです。それを教えてくださったのは、やはりブレインパッドのみなさんでした。これからは私たちがビジネス部門の共創パートナーとなって、変革を共に実現していきます。
堀川(ブレインパッド):私たちも、プロジェクトの中でみなさんが「自分たちが変革を進めるんだ」という当事者意識とリーダーシップを強烈に持ち始めた姿が印象的でした。企業の変革において欠かせないのは、まさにこのリーダーシップです。だからこそ今後も、そうした意識を醸成できる“伴走の場”をつくることで、日本企業の変革を支援していきたいと思っています。
松本(ブレインパッド):DXやデータ活用を進めるには、外部のコンサルに丸投げして頼り切るのではなく、企業自身がデジタル技術やデータを使いこなす「内なる力」を持つことが重要だと思います。だからこそ、企業の自走をどこまでも支える、このような共創型の伴走支援を今後も広く続けていきたいですね。
岡本(JALデジタル):今回プロジェクトがこれほどうまくいったのは、ブレインパッドさんと一緒に「変化を楽しむ」ことができたからだと思います。変化することって、どうしても「拒絶反応」が出たり「大変そうだな」と思ったりしがちなのですが、それを「おもしろい、楽しい」と思えるようになると、思考も一気にクリアになってくる。この積み重ねが、最終的にはお客さまに提供するサービスレベルの向上にもつながっていくのではないかと思っています。デジタル部門をバリュークリエイターへと変革するこの挑戦は、多くの日本企業に共通するテーマのはずです。変化を楽しみながら、日本のDXを前に進めていきましょう。
──本日はありがとうございました。

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