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坂井直樹氏と福田淳氏が語る、デザイン時代の経営者が持つ突出した「ブランディング」と「インサイト」とは

デザイン経営時代のブランディング 〜WASEDA NEOトークセッション第1回〜(後編)

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デジタル広告は本当にリーチしているのか

福田淳氏(以下、敬称略):デジタル領域が事業ドメインの企業を経営していたので、その総括というか反省があるんです。数年前年ぐらいから、トランプ陣営が勝利したアメリカ大統領選前後に、Facebookを中心にしたフェイクニュースが初めて問題になりましたよね。イギリスではYouTubeのヘイトスピーチにアドテク(自動広告)で公共広告がリンクされてしまい、相次いでクライアントが降板することもありました。日本でも少し前、DeNAの医療系サイト「WELQ(ウェルク)」がコピペ乱用などで炎上し38億円もの特損を出しました。

 つまり、デジタル広告がこんなに不安定で、こんなに親近感がないものなんだっていうことがバレたのが2017年あたりですよね。あれから何が変わったのかっていうのが僕の関心事です。テレビではリーチできなくなった「愛してよ」という部分をSNSなどのデジタルに託したのに、実際の仕事は、全部ウォール街みたいなコンビューターがプログラムで商品とサイトを効率的に結びつけるようになったことで、クリック単価は制御できても、愛を獲得することからはかえって遠ざかっちゃった。クライアントも、どのサイトに自社の広告が出ているのかも分からなくて。で、じゃあどうしたらいいんだろうっていう問いに対して、デザインをもってすれば次の光が見えるんじゃないかっていうのが、今この段階なのかなと思うんですけど。

坂井直樹氏(以下、敬称略):確かにね。少し整理すべき段階かもしれない。

福田:象徴的だったのが、ロレアルがデジタル広告で、「どんなサイトに出稿されたのか分からん」って言い出した。それまでは50万サイトに自動的にアドテクで広告を出したんですね。出会い系サイトにも出ているかもしれないということで、すごい数の人を雇って、出稿している全サイトを調査したんですって。その中で「これはロレアルのイメージに合わない」というサイトをやめたら、5000しかサイトが残らなかったそうです。でも、そのままデジタルマーケティングを続けたところ、レスポンスの率は全然変わらなかったんですよ。だから、デジタル広告がどういうマーケットを作り上げたのかっていうのは、極端に言えば「なかったんじゃないか」と。

坂井:今の話を聞いて思い出したのは、ニキビ治療薬の「プロアクティブ」の戦略ですね。ある時、売上がフラットになったので、「ニキペディア」というニキビのウィキペディア版を作ったんです。競合他社の薬も全部入れて。要するに、ニキビに悩む人が検索したらたどり着くオウンドメディアですね。それが非常にうまくいって、そこには「プロアクティブ」もちゃんと出てくるわけです。今はデジタル広告もそれぐらい周到にやらない限り、ただ数打てばいいっていうのはもうないですね。

福田:それはコンセプトにすごい合った行動ですよね。Twitterが出たての時、大手クライアントが広告代理店に「とにかくフォロワー数を増やしてくれ」と言ったんですね。で、「卵型」っていって、顔が付いてないアカウントをとにかく作って、中国で勝手に生成したコメントを付けて、「はい、フォロワー100万人になりました」とする、詐欺まがいのこともありました。

 その後、「共鳴・共感」とか「ストーリー・マーケティング」だのっていう話が出てきて、僕が当時アドバイスしたのは、「このシャンプーを買ってほしい」って1つ投稿したら、「三つ関係ないことを言ってください」と。「寒くなってきましたね」とか、「この木の形に似たパッケージのシャンプーが出ますよ」でも何でもいいんですけど、ユーザーはそこにSNSといえども「企業の人間性」を感じるという。

 かつて「NHK広報のツイッターはロボットじゃないか」って騒がれましたけど、すごく人間的な対応をして、「NHK、昨日の放送事故どうなっているんだ」ってツイートに対して、「待ってください。私、お昼も食べずに対応をしてるんですけど、やっとプリンを食べました」っていうのがすごい数でリツイートされて。見えない相手にも人間性を感じるようなことができた時に、マーケティングからブランディングの領域に行けるんじゃないかなと。

坂井:つまり、もう愛されてるっていうことですね。

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