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企業価値向上のためのFP&A

なぜ花王の経理パーソンは事業参謀になれるのか──FP&A機能の再定義、タフアサインメントでの人材育成

ゲスト:花王株式会社 会計財務部門 峯岸佳雅氏、瀬戸口亮介氏

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管理会計部門を「FP&Aグループ」へと改称した理由

池側:2024年度、管理会計部門の名称を正式に「FP&Aグループ」へと改称されました。単なる名称変更ではなく、組織の役割を再定義するという強い意志を感じますが、その背景をお聞かせください。

峯岸:私が欧米リージョンへ着任した際、欧米の海外子会社(KAO AmericasやKAO EMEAなど)では経理組織の中に「FP&A」という機能が明確に確立されていました。ひるがえって国内を見たとき、私たちが「管理会計」としてやってきた業務の本質は海外のFP&Aと同じであるにもかかわらず、社内からは依然として「過去の数字を正しく集計して説明する組織」という旧来的な経理部門のイメージで見られがちでした。その認識を根本から変えたかったのです。

 我々の使命は、過去の解説ではなく、未来の予測精度を高めて事業部門とアジャイルに対話し、迅速な軌道修正の意思決定を支える「ビジネスパートナー」へと進化することです。改称を決断した2024年度、根来CFO(現・専務執行役員 経営財務ユニット総括)ら経営トップが「FP&Aグループおよび新設する資本戦略部は経営直結の重要組織である。事業責任者は彼らと対話して意思決定せよ」と、社内へ極めて強いメッセージを発信してくれたことが組織変革の強力な原動力となりました。

事業部門に「計算実務」を委ね、「問いを立てる」支援スタイル

池側:花王のもう一つのユニークな特徴は、施策の計算実務を事業部門側が行い、FP&Aは「相談に乗り、モニタリングする」スタイルを基本とされている点です。なぜすべてを経理側で計算しないのでしょうか。

峯岸:新商品の起案やプロモーション施策を詰めるアジャイルな段階では、前提条件が毎日のように変化します。それをいちいちFP&Aが依頼を受けてPCを叩き、再計算して突き返していたら、現代のグローバル市場における意思決定のスピードに到底追いつけません。「自分たちが提案する施策の数字には、事業部自らが主体性と責任を持つべきである」という思想があるからこそ、計算は現場に任せるべきなのです。

瀬戸口亮介氏(以下、瀬戸口):現場の担当者と対面で向き合う際、人任せに作られた数字だと、結果が悪かったときに「経理が弾いた数字なのでわかりません」という言い訳や責任の逃げ道ができてしまいます。しかし、自分たちで表計算ソフトや管理ツールなどを活用し、手を動かして作った数字であれば、そこに強い当事者意識が生まれます。

 我々FP&Aは、彼らが持ってきた数字に対して「この角度のシミュレーション(製品構成差や物流費増の影響など)は抜けていませんか」「その前提条件は客観的に見て妥当ですか」と、適切な問いを立て、壁打ち相手になる。この距離感こそが、現場の計数感覚(ビジネスリテラシー)を向上させ、同時に強固な信頼関係を築くための鍵となっています。

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花王株式会社 会計財務部門 管理部 FP&Aグループ 瀬戸口 亮介(せとぐち・りょうすけ)氏
入社後、複数の国内工場の経理(原価計算や固定資産管理)を6年間経験し、本社の海外関係会社管理部署を経て、社内トレーニー制度で米国へ赴任。帰国後、化粧品事業のFP&A担当を経て、現在は全社連結損益の作成およびヘルスビューティケア事業のFP&A兼務体制を担う。

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この記事の著者

栗原 茂(Biz/Zine編集部)(クリハラ シゲル)

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