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企業価値向上のためのFP&A

なぜ花王の経理パーソンは事業参謀になれるのか──FP&A機能の再定義、タフアサインメントでの人材育成

ゲスト:花王株式会社 会計財務部門 峯岸佳雅氏、瀬戸口亮介氏

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高度FP&A人材を育成する、海外子会社での「コントローラー」体験

池側:花王が考える「本当にFP&Aができる人材」の要件と、それを個人のパーソナリティに依存させず、組織として体系的に育てるための工夫について教えてください。

峯岸:我々が目指す究極のFP&A人材とは、単にP/Lの集計や予測ができるだけの「計算屋」ではありません。経営層の思考と言葉を、現場が実行できる具体的な数字へと翻訳し、逆に現場の課題を経営のインパクトへと高度に集約してビジネスを自らドライブしていける「本物のコントローラー(事業参謀)」です。

 そのためには、P/Lだけでなく、B/S(貸借対照表)側の視点、資本コスト(WACC)や資金効率(EVA・ROIC)、さらにはガバナンス、内部統制、コンプライアンスの仕組みまで完全に血肉化している必要があります。

 これを属人化させずに育てるため、花王では経理人材が会計財務部門、SCM・工場経理、事業部門のコントローラー、国内・海外関係会社の間を循環する網羅的なジョブ・ローテーション(キャリアパス)をコアチームの合議のもとで30年以上徹底して仕組み化してきました。

 とりわけ強力な育成プログラムとなっているのが、「若手のうちに、海外の比較的小さな子会社のコントローラー(管理部長)として派遣する」というタフアサインメントです。大企業の細分化された一部分しか見られない環境とは異なり、海外の小さな拠点では、現地の経営責任者(プレジデント)のすぐ横で、会社の財務からオペレーション、税務、時には現地のスタッフマネジメントまで一通り回る全容を自分の責任で体験せざるを得ません。

 この「総力戦」の原体験こそが、本物のFP&A人材を輩出する最高の訓練場(ベストプラクティス)になっています。

仕組みに頼りすぎず、情報の「Give&Take」で信頼を勝ち取れ

池側:最後に、海外の優れたモデルやシステムをそのままコピーするのではなく、自社の雇用慣行や文化、強みに根ざしたFP&A組織を構築しようとされている日本企業のリーダーに向けて、最も大切にすべきメッセージをお願いします。

瀬戸口:事業部門の懐に入り込む際は、一方的な数字の要求ではなく、情報の「Give&Take」が絶対的な基本となります。単に会計財務の物差しを押し付けるのではなく、自分が他部署や工場、あるいはグローバルなネットワークから横断的に集めてきた「他では手に入らない生きた一次情報(他事業部での成功パターンや現地のリアルな需給動向など)」を事業部に真っ先に提供するのです。

 そうした泥臭い価値提供と対話の積み重ねの先にしか、事業部が本当に頼りにしてくれる「経営のパートナー」としての真の信頼関係は生まれないと確信しています。

峯岸:最も大切にすべきことは、「仕組みや権限、ルールに頼るのではなく、現場との圧倒的な対話を地道に積み重ねること」です。どれだけ最先端のERPやBIツールを導入し、あるいは「FP&Aのサインがなければ投資起案が通らない」といった強力な職務権限のルールを作ったとしても、事業部側から「この人と話をするとビジネスに新しい気づきがある、戦略の役に立つ」と心から信頼されなければ、組織は絶対に形骸化します。だからこそ私たちは、仕組みづくりだけでなく、メンバー個々の経験をとおした人材育成を最も重視しています。

池側:花王の強固なFP&A体制の根底には、140年培われた現場起点のものづくり精神(よきモノづくり)と、システムを超えてお互いを信頼して泥臭く対話を続ける「The Kao Way」のカルチャーがしっかりと息づいているのだと深く理解できました。本日は非常に示唆に富むお話をありがとうございました。

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この記事の著者

栗原 茂(Biz/Zine編集部)(クリハラ シゲル)

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