人間が高度な業務にシフトするための「知財AIポリシー」
組織変革と並行して、ダイキン工業が強力に推進しているのが「生成AI」をはじめとするデジタル技術の知財実務への適用である。安部氏は、同社における知財AI活用の指針として、明確な3つのポリシーを掲げている。
- AIでも結果が変わらない定型・単純業務は、すべてAIに任せる
- 人間がより高度な知財業務にシフトできるよう、AIを強力なアシスタント(ハイブリッド型)として位置づける
- 最新のAI動向を絶えずウォッチし、社内に適した知財AIを迅速にアプリ化・全社展開して高度化・効率化に貢献する
現場の知財実務を激変させた3つの「AIインテリジェンス活用事例」
【事例1】特許の「2行要約」と課題・目的タグの自動付与
技術者や知財部員にとって、日々発生する膨大な特許公報の読み込みは極めて重い負担であった。そこで同社は、特許文献のテキストを生成AIに投入し、一目で技術の大枠を理解できる「2行要約」と、技術の「目的・課題・解決手段」を簡略化したタグを自動生成するシステムを開発した。このシステムを社内展開した結果、特許調査にかかる工数をじつに7割以上削減することに成功した。
【事例2】特許マップ作成の自動アシスト
商用検索ツールなどからダウンロードした膨大な特許リストをAIにインプットすることで、特許文献に記載文章から課題等を自動抽出し、「大分類(上位概念)」「中分類(中概念)」「小分類(個別項目)」へと自動的に階層分類する仕組みを構築した。さらに要約や翻訳も自動付与され、特許マップ作成を強力にアシストする。これにより、競合他社の注力領域や自社が狙うべき「空白領域(ホワイトスペース)」の可視化が極めてスピーディーに行えるようになり、知財戦略の議論の質を大幅に高めている。
【事例3】FTO(クリアランス)調査におけるノイズ特許の一次判定
他社の特許権を侵害していないかを検証するFTO(Freedom to Operate:権利クリアランス)調査は、万が一のリスクを回避するために極めて厳密な運用が求められる。しかし、キーワード検索で抽出した特許母集団には、隣接分野の膨大なノイズ特許が含まれる。同社では、社内の技術資料や特許母集団リストをAIに学習させ、確認対象から除外すべき「ノイズ特許」か精査すべき「非ノイズ特許」かをAIに一次判定(スクリーニング)させるフローを導入した。
AIの判定基準は「超保守的」に設計されている。それでもなお、全件確認が必要だった従来のフローに対し、平均で約20%、事案によっては最大約70%もの確認対象特許の圧縮に成功し、人間が真に警戒すべき重要特許の精査に集中できる環境を実現している。
