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経営変革の「思想」と「実装」

宇田川教授と語る、経営における「A面」と「B面」──「経営の喪失」から脱却するための「良い負け」とは

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経営のB面における、ケアとしての「顧客の創造」

栗原:ケアと経営の関係を、もう少し解説していただけますか?

宇田川:「ケア」の反対は「選択」だと、オランダの医療人類学者アネマリー・モルが言っています。たとえば糖尿病の人やアルコール依存症の人が、つい食べてしまった、飲んでしまったということがありますよね。それを「悪い選択をした」と捉えるだけでは解決につながりません。そうしたのには理由があるはずで、ここからどうするかを考えて再スタートする──ということをやり続けるしかありません。人間は必ずしも合理的な選択をできないものだという前提に立ち、人間の弱さを受け入れるということがケアなんです。

 良い、悪いという専門的な判断を脇において、「なんでそうなっちゃったんだろう」と考え、まだ見えていなかったものを見ようとするのがケアです。それは、ケアをする人の実存が常に問い直される実践であるとも言えます。なぜならば、見えていなかったものを常に突きつけられることを意味するからです。

 そう考えると、ドラッカーの言う「顧客の創造」もケアだと言って良いかもしれない。まだ顧客になっていない人々の声を、その人たちの世界に分け入っていき、聞こうとするということですから。これはある意味、負けをちゃんと続ける、ということだとも言えます。

企業変革における「良い負け」とは

栗原:負け、ですか?

宇田川:はい。経営においては「良い勝ち負け」と「悪い勝ち負け」というものがあります。多くの企業は経営の評価を「A面」に当たる「成果」の有無で判断しますが、そこに「B面」に当たる「意味」という軸を加えると、勝ち負けの分類は4つに分けられるように思います。

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 成果も意味もあるという状態が「良い勝ち」ですが、成果が出ていても仕事が無意味化しているなら「悪い勝ち」の状態です。「記号化」が進んでいてKPIだけを追い求める状態というのは、計算可能性が高くて説明もしやすいのですが、それだけでは会社の独自性、つまり競争力の源泉がなくなってしまいます。

 その状態から抜け出すには、一度「B面」から事業を問い直し、「良い負け」ができるようにならなければなりません。まだ成果は出ていないが意味が感じられる、という状態です。それは、「自分たちは誰を幸せにするために存在しているのか」という実存的な問いかけに立脚し、挑んだ結果起きることです。変革をするには、そのような「良い負け」を許容するということを、まだ企業体力があるうちにやっていく必要があるでしょう。

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 髙田さんがV・ファーレン長崎の社長を退任するときに語った、「J1復帰という成果は出せなかったが、皆さんと一緒に戦ったという現実があるから悔いはありません」という言葉[2]は、まさに「良い負け」の精神を体現しています。スポーツは勝つこと負けることが大切ですが、最終的な目標は人々を幸せな気持ちにすることではないか、という問いです。しかし、この言葉が空虚な美辞麗句にならないのはなぜでしょうか。それは、人々と共に苦悩し続ける存在として、道を歩まれているからではないかと思うのです。

 「B面」から始まる一見非効率な「ケア」や「良い負け」の蓄積とは、単に良い経営をA面的に展開するための材料ではありません。この時代、この世界で共に苦悩して生きていこうとすることが経営の根幹であり、B面というものに表現したかったのは、そのことなのです。

[2]Jリーグ公式チャンネル「【ノーカット】今シーズン限りで退任するV・ファーレン長崎 髙田社長のスピーチ」(2019/11/17)

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経営を再構築するための4つの論点

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やつづかえり(ヤツヅカエリ)

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