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共創し学習する新しい組織論

ホラクラシーが機能する、ネットワーク状の構造を持つ「テンセグリティ組織」とは?

埼玉大学 宇田川元一 准教授 × ダイヤモンドメディア株式会社 武井浩三代表取締役:前編

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組織的にイノベーションを生み出す「対話の力」に注目する

武井(ダイヤモンドメディア株式会社 代表取締役 共同創業者):
 今日はまず、先生の研究領域について教えていただけますか。

宇田川(埼玉大学 人文社会科学研究科 准教授):
 元々は、組織論や戦略論の理論研究をやっていました。ただ、父親が零細企業の経営者だったことから、それまでの組織論や戦略論で言われていたエレガントな理論に対して「本当にこれなのかな?」という疑問を抱いていました。そして、まだ研究者としては駆け出しの頃に「クリティカル・マネジメント・スタディーズ(批判的経営学研究)」というものに出会いました。

 ちょうどエンロン事件の頃にそれを知ったのですが、一般的な意味での戦略的な経営の結果がエンロン事件だとしたら、それで良いのか? というふうに、伝統的な経営学に沿った組織運営を批判的に研究する方法論でした。父親の会社を見ていても理論と実践はかけ離れている気がしてはいたのですが、理論的にもそういう問題があるんだと気がついて、かなりショックを受けました。それ以来、これまでの階層的な組織の限界とは何かということを考えてきています。

 今の階層型組織の下敷きになっているフレデリック・テイラーの科学的管理法は、工業化が進みつつあるアメリカで、大量の移民労働者、つまり言葉が通じない人達を使ってどう効率よく製品を作ることができるかを研究した標準化の手法です。階層型組織の特徴はコントロールができるということですが、それには限界があって、イノベーションが生まれなくなります。その問題を指摘したのが、90年代の半ばにクリステンセン教授が出した『イノベーションのジレンマ』です。それと、バーゲルマン教授の『インテルの戦略』。原題は『Strategy is Destiny(戦略は運命である)』で、あれだけ大成功したインテルがどうして衰退していくのか、どうしてイノベーションが起きなくなっていったのかが描かれています。

 こういった研究成果から、階層型組織でイノベーションが生まれなくなるロジックは大分見えてきました。じゃあ、この先どうしたら組織はイノベーションを起こせるのか? その点について悩んでいるときに、ナラティブ・アプローチというものを知りました。これは臨床心理や医学などの領域で使われている方法で、「対話には何か新しいものを生み出す力がある。その力を信じましょう」というのが基本的な考え方です。

 「対話をベースにした組織とはどういうものか」というのが、今自分が追い求めているテーマです。対話が生じるような関係性をどうやって作るかがポイントだと考えていて、おそらくダイヤモンドメディアもそういう組織なのだと感じています。

宇田川元一宇田川元一氏(埼玉大学大学院人文社会科学研究科准教授)

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