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経営変革の「思想」と「実装」

社会的正義を意思決定の軸にする変革リーダーの役割──失敗を許容し挑戦を生むトライアルの組織文化とは

第4回ゲスト:株式会社トライアルホールディングス 代表取締役社長 亀田晃一氏【後編】

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現場での実験と改善を繰り返し、利用率が劇的に向上

宇田川元一氏(以下、宇田川):トライアルの店舗で使われている「スマートショッピングカート」は、どのような経緯で開始したのでしょうか。

画像を説明するテキストなくても可
写真はRetail AIの「ホームページ」より、許諾を得て使用

亀田晃一氏(以下、亀田):創業オーナー(永田久男会長)が起点でした。2007年頃に自分でiPhoneを使い始め、「これはすごい。買い物に使えるよね?」というところからスタートしました。

 スマートフォンがお客さんをガイドするような役割を果たせるのではないかと考えたようです。だから最初は、スマホサイズのものをカートにくっつけていました。でも、それだと小さくて見えないですよね。小さすぎて、おじいちゃんやおばあちゃんには一切使ってもらえません。そんなわけで、タブレットが安くなってきたところでタブレットをつけることにしました。

宇田川:創業オーナーの永田さんの発想がきっかけで、その後はプロジェクトチームを作ったのですか。

亀田:自然発生的にチームができて、そこにキャリア採用のメンバーも加わりました。

 キャリア採用でAIに関するプロフェッショナルが入社して、その人物がカートとタブレットと、店舗内の顧客や商品の動向を把握するAIカメラの原型を作りました。店舗でレジを管理しているオペレーション全体を見ているメンバーも意見を出しましたが、基本的にはその人物がオーナーとなり、指示を受けてスタッフが形にしました。それを改良し続けて今に至ります。

宇田川:どのような改良がなされたのでしょうか。

亀田:最初はAmazonみたいにかっこいいことをやりたい、ということでレコメンドを一生懸命やるわけです。でも、さまざまなクーポンをつけてもお客様は使ってくれなかった。なぜなら、クーポンは何も課題を解決しないからだとわかりました。求められているのは「お得」よりも「便利=不便の解消」なんです。

 そこでお客さんの課題を考えてみた結果、「決済だよね」と。レジを待っている時間がものすごくストレスでそれがお客様の大きなペインだということで、カートに決済機能をつけました。

 決済機能をつける場合、テクノロジーの会社はRFIDだとか画像認識だとか、まずテクノロジーから考えますよね。いずれはそうなるかもしれないけれど、コストも重要な要素です。タブレットにバーコードリーダーがあるわけだから、お客さんにそれを使ってもらえばいいということで、セルフのPOSレジができました。ただ、カートでは現金は扱えません。「じゃあプリペイドで良いじゃないか」ということで、ちょうどその前から力を入れて拡販していたプリペイドカードで決済できるようにしたら、利用率が劇的に上がりました。

宇田川:すごいですね。

亀田:とにかく、ずっと考え続けることが重要です。現場の従業員も一緒に「なんでうまくいかないのか」「どうあるべきか」ということを考えて、不出来でも構わないからまずは実験します。

 最近「ユーザーインターフェースが良くなったね」とお褒めの言葉をいただくことが増えましたが、最初はユーザーインターフェースに気を使うよりも、まずは解決すべき課題を特定し、とにかく作って実際のオペレーションに入れてみます。GAFAがウェブ上でやっていることを、現場のオペレーションでやっているわけですね。それを繰り返すうちに今の形になり、利用率がやっと上がり始めました。だから、失敗の繰り返しですよ。

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やつづかえり(ヤツヅカエリ)

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